野岩鉄道で撮影した主な写真は全てアップしたので、
本来なら前回のエントリーでシリーズ終了だったんですが、
今回、初めて野岩鉄道に趣いて、
いろいろ感じることがあったので、ちょっと書き留めておきたいと思います。
今回、野岩鉄道へ撮影に趣いた理由は、あくまで「6050系を撮りたかった」からです。
仮に、まだ東武で活躍していれば東武線内で良かったし、
あるいはもし会津鉄道で現役なら南会津方面でも良かったんです。
2025年現在であれば、「6050系を撮りたい」と思えば、
自動的に「野岩鉄道に行かざるをえない」わけです。
ところで、野岩鉄道を「やがん」と読むことを、
割と最近まで知りませんでした。
何となく「のいわ」なのかな、と(鉄道ファン失格です)。
それだけ、興味の範疇から大きく離れていた事になります。
いつも、見知らぬ路線に撮影に行く際、一番最初に始めるのは、
Windowsのダイヤグラム作成ソフト「OuDia」でダイヤを作る事です。
(今知ったんですが、「OuDiaSecond」なんてのが出来てる)
撮影可能時間帯のダイヤをちまちま入力すると、
簡易なダイヤグラムが生成される、というソフトで、
これをプリントしたりPDFにしてスマホに入れたりして現地に向かいます。
各駅・各列車の発停車時間をソフトに入力しながら、
「あれ、列車本数、これだけ?」と気がつきました。
普通列車が異様に少なく、特急「リバティ会津」とあまり変わりません。
ただこれは、野岩鉄道内は特急料金不要、かつ停車駅もほぼ全駅、
というカラクリがあるからだと分かり、ある程度納得いきましたが、
にしても、このダイヤの組み方はどうした事か、と思いました。
OuDiaにデータを入力する感覚だと、いすみ鉄道とえらく変わりません。
野岩鉄道と言えば、東武線浅草方面からの直通列車があり、
会津方面への観光列車が走っていて潤っている、というイメージがありましたが、
どうやらそれは20年以上前の事でした。
Wikipediaによると、野岩鉄道の輸送実績は、
「輸送密度」が1986年の2268人/1日だったのが、2021年は262人/1日で約11%に減少。
「収入実績」も、最盛期の1991年は6.5億円だったのが、2021年は1.8億円ほどで3割弱に減少。
まさか、こんなに「ローカル線化」しているとは思いませんでした。
そして、ここ数年の状況を振り返ってみると、
2022年春のダイヤ改正で東武との直通の普通列車がなくなるなど、
運用に大きな変化が生じたようです。
野岩鉄道が開業した頃は、
東武鉄道も日光と並んで会津方面への観光需要に
大きな期待をもっていたはずです。
かつての東武鉄道は、8000系が長年1両の廃止も出さずに延命してきたりとか、
5050系など釣り掛けモーターの電車が21世紀に入っても現役だったりとか、
6000系の車体だけ更新して6050系にしたりとか、
1720系の車体だけ更新して200系にしたりとか、などなど、
涙ぐましい努力をしていた会社です。
私鉄としてはかなりの路線長を有する会社なので、
地方のローカル線まで維持するには相当の苦労があった事は想像に難くありません。
ところが、スカイツリーが開業したあたりから状況は一変します
(そう、スカイツリーは東武の所有物です)。
新しい電車を次々と作り始め、
なんと鬼怒川方面ではSLを走らせるようになってきました。
日光はすっかり世界的な観光スポットにもなり、
外国人観光客で溢れかえっています。
こうなってくると、もはや、じり貧の会津方面にすがる理由などありません。
有り体な言い方をすれば切り捨てられた、という事でしょうか。
野岩鉄道社長のXのポストを見ていても、
東武鉄道との微妙な関係性を感じさせることが少なからずあります。
もちろん、年々乗客が減少していくこの状況に対し、
野岩鉄道が手をこまねいていたわけではありません。
ダイヤが大幅に変わった2022年、クラファンを実施して、
6050系を「やがぴぃカー」に改造したのが何よりの証しです。
6050系の社内に畳を敷く?と多少の疑問は感じましたが、
何か面白い事をして盛り上げたい、という気概は感じました。
(それに、外観に変化がなかったので、撮り鉄としては無問題です。)
この「やがぴぃカー」、本来は有料観光列車として走らせる事を念頭に改造されわけですが、
2025年春の改正で観光列車としての運用終了し、通常の各停・快速運用についています
(なので、撮影に行った時に乗車することができたわけですが)。
残念ながら、利用客増の起爆剤にはならなかったようです。
すぐ目の前の下今市-鬼怒川温泉には「SL大樹」が走っているわけですから、
その先の野岩鉄道にも鉄道ファンに来て欲しい、という狙いがあったんでしょうが、
恐らく、その当ては外れたんだろうと思います。
さすがに、6050系ではニッチでコアなファンしか興味を示さないでしょうし、
そういったファンは、改造などせずオリジナルのままである事の方を強く望んだだろう、
とも思うわけです。(いっそ、車体を6000系に戻します、
くらいの事をする方が、ファンは驚き仰け反った事でしょう。)
次に、目線を変えて一般の観光客に関してはいかがでしょうか。
ところで、前々から不思議だったのは、野岩鉄道の立ち位置です。
下今市から会津若松まで線路は一本で繋がっていますが、
その間、鉄道会社は「東武-野岩鉄道-会津鉄道-JR(只見線)」と入り乱れています。
簡単にまとめれば、国鉄会津線の終点だった会津滝ノ原駅(現・会津高原尾瀬口駅)から、
東武鬼怒川線の終点だった新藤原駅を結ぶ路線として建設開始されたのが国鉄野岩線で、
国鉄再建にともない工事が中断したものの、
第三セクターに引き継がれて、晴れて野岩鉄道として開業にこぎつけました。
すなわち、野岩鉄道(正確には会津鬼怒川線)は会津と鬼怒川を結ぶバイパス路線であり、
少しでも速く列車を走らせるため、
鉄橋やトンネルを多用した「高規格路線」として設計・建設されたわけです。
この事が、風光明媚な地域の路線なのに、
やたらトンネルばかりで景色を充分に堪能できない、という
「観光路線」としては致命的な状況を生み出してしまいました。
そしてそれが、現在の野岩鉄道の大きな足かせになっているように思われます。
もし、野岩鉄道が、あまりトンネルを掘ることなく、
カーブは多く速度は出せずとも鬼怒川に沿うように建設されていれば、
ひょっとしたら「SL大樹」の終着駅は会津田島辺りに設定されて、
秋になると見事な紅葉をたっぷり楽しめる、
まるで嵯峨野観光鉄道のような大人気観光スポットになったかもしれないな、
と想像してしまいます。
大赤字の国鉄が、無理して大枚はたいて高規格路線として建設しなければ、
と今更悔やんでも仕方ない事ですが。
車窓はお世辞にも風光明媚とは言えない野岩鉄道ですが、
一応、沿線には川治温泉、湯西川温泉(駅からはちょっと遠い)、
中三依温泉などの湯処が点在しているので、
日光方面の観光客の宿場として機能し得るのでは、と思うのですが、
どうも現実にはそうもいかないようです。
かつては日光駅まで乗り入れていた「AIZUマウントエクスプレス」が、
鬼怒川温泉駅止まりとなり、4往復→1往復に減便されてしまった事が、
その現実を証明しています。
(あるいは、観光バス移動のお客さんが多い、という事でしょうか?)
さて、どうしたもんじゃろうのぉ(たまに口をつく「とと姉ちゃん」の口癖)
て事で、「一般の観光客」と「鉄道ファン」、
2つの視点で、今後野岩鉄道はどうするべきか、考察してみたいと思います。
観光客については、
野岩鉄道内に「目的」となるべきところが少ない
(竜王峡の散策や、ダムウォッチ、温泉めぐりなど、
決して「何もない」という事はないんですが)事を考えると、
やはり、何とかして日光詣での観光客に宿泊してもらえるよう、
東武鉄道に頭を下げて?でも直通列車は復活させてほしい所です。
日光-下今市-新藤原-会津田島、の直通列車を、
1日に1往復でも良いので走らせるべきかと思います。
朝は会津田島→日光で「一泊してから日光へ行く人」向け、
夕方に日光→会津田島で「日光観光した後で宿泊地へ移動する人」向け、
の1往復で充分かと思います。
現状、この運用に一番近いのは「AIZUマウントエクスプレス」ですが、
午前中に往復する運用であり、
また、鬼怒川温泉駅止まりなので、
日光を絡めた移動の手段としてはほぼ機能していないと考えるべきです。
加えて、会津鉄道のAT-700形は、アコモは充分とはいえ、
観光列車としての存在感には乏しい車両と言わざるを得ません。
(何とか頑張って名鉄8500系を延命して欲しかった…。
あるいはJR東海からキハ85を買うとか、JR四国から185系を買うとか、
何か対応はなかったかな、とも考えてしまうのです)
列車本数ですが、さすがに現状だと少なすぎるように思います。
ちょっと竜王峡を散策して次の駅へ…と思うと次の列車は1時間半後、では、
1日で行動できる範囲がさすがに狭くなりすぎ、
乗り放題の切符を買っても途中下車する事を躊躇してしまいます
(先日、湯西川温泉駅で手持ち無沙汰になった経験者が語る)。
何とか、単コロ(1両編成)でもいいので、
新藤原(できれば鬼怒川温泉)-会津高原尾瀬口(できれば会津田島)を、
ひたすら往復するような運用が必要だと思います。
単コロなら、車両はどうしましょうか?
1Mの電車、というのは選択肢が少なそうです。
東武10000系のクモハを両運化、なんて荒技もありますが、
この際、ディーゼルカーでもいいかもしれません。
JR東日本から中古のキハ110を調達、でもいいでしょう。
コンパクトで小回りの利く車両でひたすらピストン輸送、
で構わないと思います。
(6050系は、土日など観光客が増えそうな時だけ投入でも、
この際構わないような気がします。
その方が希少価値が出るかもしれないので…)
でも本心は、鉄道ファン向けのアピールとして、
どこかからキハ40を調達してきて運用して欲しいところです。
「SL大樹」に乗って鬼怒川温泉駅に降り立つと、
そこに真っ赤なキハ40がいて、更に奥地へ進んで行ける…、
と想像すると、なんだか気持ちが高まってくるではありませんか
(全力で否定されそうですが)。
あえて、JR四国の「非カミンズ」のDMF15エンジンを搭載したキハ40を購入、
というウルトラCも考えられます。
勾配の多そうな野岩鉄道線内を、
非力なキハ40が「ぎゃあぁぁぁ~~~」
と騒音&排煙を撒き散らしながら走って行く様を想像すると、
気分は一気に国鉄時代に逆戻りです
(全力で否定…以下略)
ちょっと冗談混じりとなりましたが、
過疎ダイヤの改善、運行コストの低下(キハ40だと逆に上がりそう?)、
鉄道ファンの興味を惹く、といったポイントを考えると、
6050系という切り札は残しつつ、
メインは単コロの気動車で、という選択も、
意外と悪く無いように思います。
どうせ、東武から運用を切り離されて独立運用主体となっているなら、
好きなようになればいいんじゃないでしょうか。
そろそろまとめに入ります。
そもそも、野岩鉄道が、それ単体で集客を増やす術に乏しい路線であるため、
売上増、集客増を果たすには、ちょっとやそっとの事では対応できません。
実質的に東武鬼怒川線からの乗り換えないし直通だけが受け入れ口であり、
かつ、多くのお客様は更に奥の会津方面へ向かうであろうことを考えれば、
「沿線観光の開発(そのためには、気軽な途中下車が可能なダイヤの構築)」、
「宿泊客の増加」(何とか東武と仲直り?して日光への直通を復活させる)、
「鉄道ファンのエサになる列車の存在」(6050系以外の目玉の確保)、
といった要素をいかに充実させていくか、が鍵になっていくように思われます。
一ファンとしてできる事は限られていますが、
せめて、足繁く通って(もちろん切符を買って電車にも乗って)、
写真を撮って広報活動?にも努めていこうと思っています
(そんな気持ちでこんなエントリーを書いた次第です)
そして、トミーテック「鉄道コレクション」から、
「やがぴぃカー」2連のセットが出ている、と知ったので、
ついつい買ってしまいました(笑)


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