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2007年12月 4日 (火)

私的ミシュラン論

「ミシュランのタイヤは非常に優秀です。
ミシュランのタイヤを履いた車であちこち旅をしましょう。
旅先での食事や宿で戸惑わないように、
弊社が自信を持ってお薦めできる店をご紹介します。」

ミシュランのガイドブックは、そんな理由で作られたと聞きます。
(微妙に違うかもしれませんが、ご勘弁を。)

フランス旅行の定番ガイドブックの東京版、
まさかこんなに大反響になるとは、
ミシュランマンも驚きでしょう。

実は、僕が最初に就職した会社はと、ある料理屋でした。
(料理人でも、サービスでもありません。事務員です。)
わずか1年3ヶ月しかいませんでしたが、
今でも、あの頃の濃密な経験が体中に染み付いています。

あの会社で共に仕事をした名料理人のうち、実に3名もの方が、
ミシュランで★を獲得しました。これは、望外の喜びです。

にしても、ミシュランを巡るあれこれ、ネットで議論されてますね。
そんな高い店に行けるかよ、とか、日本人向きじゃねぇだろ、とか、
そんなにお偉い本なのかよ、とか。

でも、ミシュランだからこんな感じだろう、と思っていたので、特に違和感は覚えませんでした。

そもそもミシュランは、最初に書いた通り、旅先でいい食事を楽しみたい人に、
お薦めのお店を紹介するガイドとして作られています。
(レストランだけじゃなくてホテルも紹介されてる、という事はあまり知られてないような?)
いい食事とは、ただ美味しいだけじゃなく、
サービスとか、雰囲気まで堪能できて初めて成立するもの、
という前提は、是非理解しておくべきでしょう。

もちろん、主観の相違というものもあります。
旅先だからこそ、なるべく食事の予算や時間を節約して、
少しでも多く観光したり買い物したり、と思う人もありましょう。
それはそれで価値観ですし、おかしくもないと思いますが、
たた、ミシュランを必要とはしない方だろうな、とも思います。

例えば、寿司。
同じ寿司を食べるにしても、
回る寿司もあれば、すべてのネタが「時価」な、
僕みたいな若造では「とりあえず、入らない方が良さそう…」
と二の足を踏んでしまうような店までピンキリです。
かといって、「ごはんの上に魚(等)が載っている」、という基本スタイルは、
回ろうが高かろうが変わりがありません。
また、回るからマズイとも限りませんし、
高いけどおいしいと評判の寿司屋でも
「あそこの主人はワサビを入れすぎるので、どうも苦手」
「店の中にゴキ○リがいた」など、マイナス要因があるかもしれません。

同じ寿司でも、なぜ、50円の玉子がぐるぐる回る店から、
一通り食べたら云万円という店まであるのか。
食材にこだわるとか、生きの良い魚を仕入れてるとか、
そういう理由だけで片付かない理由としては、
やはり、内装だとか食器、調度品へのこだわりを忘れるわけにはいきません。

同じ料理でも、100円均一で買ってきた皿(最近は、いいのもありますけど)と、
魯山人の国宝的皿で出されるのだと、やはり、気分が違ってきます。
食べる側も、思わず身構えてしまいそうになります。

コンクリートの打ちっ放しの店内で食べるのと(個人的にはそういう店も好き)、
ちゃんとした和室の中で、いい掛け軸もかけてあって、
外では純日本庭園でししおどしが「コロン」と響いているところでは、
やはり趣が変わってきます。

少ない客数しか入らない店に、多くのスタッフがいて充実しているとすれば、
その店は人件費もしっかりかけている、客を大事にしている、という事になります。
経営者にとっては、人件費をいかに削るかは、常に頭の痛いところ。
でも、そこを削ってしまうと、接客がおろそかになって客の印象が落ちる事になります。
それは、長期的に見れば、客足が遠のく一因ともなります。
ファミレスならともかく、いい店であれば死活問題です。

効率をあまり考えないのも、こういう店の特徴かもしれません。
チェーン店の牛丼は300円から400円くらいですが、
材料を工場で大量に生産する事でコストを押さえるなど、
工業製品的に原材料を下げる努力をしています。
もし、個々のお店で、材料の買い付けから全て行うとすると、
とてもそこまで安い値段で販売する事はできません。

たった一皿にかけるコストの違いは、
その辺のチェーン店と、ミシュランに載っていたような、
一度の食事で1万とか2万のお店とでは、
えらく違う、という事になります。

結局、ミシュランに載るような店というのは、
味の善し悪しじゃないんですよね。
「芸術」とか「教養」とか「時間」「空間」とか、
いろんなものを、食事を通して演出しているかどうか、
というのが、判断基準として重要になってくるんじゃないでしょうか。

僕もたまには、そういう「ハレ」の店で食事をしたくもなります。
今年は、春に、カミサン(当時はカノジョ)の誕生日のお祝いで、
とあるフレンチのお店に行きました。
その店は、ミシュランでは★★を取っていました。
料理の美味しさは当然ながら、客にいい時間を提供し、もてなそう、
というスタッフの心遣いが徹底していた事が印象的です。

特別な時に行きたくなる、行って損はしないのが、
ミシュランに載っているお店だろう、と思います。

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