RICOHFLEX VI!!!
「ブローニーには、手をださん!」
と、『写真工業』誌の08年12月号(最終号)を読みながら、
心に固く誓ったのは、昨年12月15日頃。
しかし、その2,3日後・・・
会社の同僚から、仕事絡みで「ちょっと来て下さい」と言われ、
デスクを訪ねると・・・
机上に置いてあるもの・・・
Hasselblad 500C
Carl Zeiss Planar T* 80mm F2.8
「ぎゃあ~~~~~~」
そんな断末魔の叫びをしてしまうのも、無理はありません。
35mm判なら、ライカ。
大判なら、リンホフ。
とくれば、
中判(ブローニー)ならハッセルブラッド。
究極にして最高峰のカメラ、と言っていいでしょう。
それが、初めて、目の前に、手の届くところにあるんです!
これを、興奮せずにいられましょうか・・・。
・・・しかし、こんな大興奮も、多少「社交辞令」的なものがありました。
というのも、実際のところ、
自分自身がハッセルを使いこなせるとも思えないので、
そこに手を出そうなどという気持ちは、これっぽっちもありません。
また、ツァイスのプラナーが素晴らしい事も、
当然の事として知っています。
もちろん、初めてハッセルを手にする、という事は、
大変貴重な経験ではあったのですが、
もっと、カルチャーショックであった事・・・、
それは、「ファインダーから見える風景」、でした。
・・・何、この立体的な景色!!
APS-Cサイズのデジイチが、35mmサイズのデジイチに比べ、
いまいちボケない事は知られています。
被写界深度が浅く、かなり開放F値の明るいレンズを使っても、
意外に深度が深い、いかにも二次元、な画像になってしまいます。
それに対し、ハッセルのファインダーから覗いた風景は、
ピントのあったところがフワッと浮きだし、
背景がなだらかにボケ、それが「背景」としての存在感を示しています。
ステレオ写真でも無いのに、
これだけの立体感が得られるのが中判なのか!、と、
当たり前の人には当たり前の事に気づき、
そこに深い衝撃を受けました。
また、その瞬間、頭の中で、何かが切り替わりました。
それまでは、なんとなく、中判を買う事があるとすれば、
PENTAXの67か645だよなぁ、それ意外に選択肢無いよなぁ、
と思ってました。
当然、主たる被写体である鉄道を撮る事が大前提の事です。
でも、このファインダーから受ける衝撃を画にするには、
かなり近い距離の人、あるいは物を撮らないといけません。
それなら、レンズは標準程度だけあればいいし、
そもそも、立体画像になるのは中判の特性であって、
カメラやレンズは「それなり」のものでも、
意図する画が得られるであろう、と思われました。
そして、思いついたのです。
「二眼、だな。」
約20年の写真人生、二眼レフがいいな、なんて思った事は、
ほとんどありませんでした。
あるとしても、興味本位程度で、
それが必要なシチュエーションがある、と思っての事ではありませんでした。
それが、ハッセルのファインダーを覗いた事で、
「安くて良く写る二眼レフ」というものを、
手にしたくて仕方なくなりました。
・・・そんなこんなで、冬休み突入。
右も左もなく、カメラ屋を行脚し、
いろいろ物色しました。
まぁ、都内のカメラ屋にある二眼レフといえば、
その8割程度は「ローライフレックス」。
ようするに、超高級二眼レフなので、
僕が望むものとは、性質が異なります。
1950年代、一時代を築いた、庶民向け二眼レフは無い物か・・・
そして、新宿西口「中古カメラ市場」のジャンクコーナーにて、
ついに発見しました。
リコーフレックスは、まさに大衆のための二眼レフカメラ。
必要ない部品を削り、便利な機能を一切省き、
安価さを追求しつつ、肝心の「写り」には妥協をしていない・・・
実は、同じジャンクコーナーに、
ゼンザブロニカのジャンクも安く売っていたのですが、
悩みはしつつ、このリコーフレックスを\5.250-で購入
(相変わらずの安物買い・・・、ちなみに、レンズカビ有りでした)
早速家に帰って整備しますが、
さすが大衆機、いとも簡単に分解できる!(笑)
なんせ、上部の4つのネジをはずせば、
ファインダー蓋とフィルム室蓋がはずれ、
前部のネジ4つをはずせば、フロント面もはずれ、
これで全パーツがバラバラになってしまいます。
巻き上げノブは、フィルムを送るためだけのもので、
シャッターのチャージはしません。
次のコマを判別するのは、
背面の赤窓をあけて、フィルム裏紙に書いてある
「1」「2」「3」・・・の数字を直読み。
なので、フィルムカウンターなんてものもなし。
お恥ずかしい事に、
巻き上げを忘れてシャッターを切り、
「多重露光」してしまう失敗を、
フィルム2本・24コマで3回もやってしまいました・・・
シャッターは、レンズシャッターから直に出ているツマミのみで、
保体にレリーズは無し。
しかも、RIKEN(理研光学=リコーの当時の社名)のシャッターは、
精工舎やコパルのレンズシャッターと異なり、
部品がほとんど無い超簡素な作りで、シャッター速も
「B」「1/25」「1/50」「1/100」の4つのみ。
なんともチープな作りですが、
その代わり、「壊れそう」「もろそう」な部分が皆無で、丈夫です。
かつ、僕のような素人でも、意外に簡単にメンテできます。
レンズは、「RICOH ANASTIGMAT」。
アナスチグマットは、そもそも、19世紀の末に、
カール・ツァイスのパウル・ルドルフ博士が設計したレンズの名称で、
収差補正がなされているレンズを示す名称でした。
本当は、4枚のレンズで構成されていないとアナスチグマットは名乗れないはずですが、
リコーフレックスに搭載のレンズは3群3枚のトリプレット。
トリプレットは、最小構成枚数でほとんどの収差が補正できる光学系なので、
決して「名ばかり」ではありません。
ピントをあわせるためのビューレンズと、
撮影用のテイクレンズを結ぶのは、
レンズ自体の歯車、という、なんとも原始的な方法。
それがまた、メカ、って感じで、ますますそそられるのです。
しかし、二眼のピントの調整は、かなり苦慮しました・・・
最初、ビューレンズとテイクレンズを、
同じ高さに揃えてセッティングし、
初ブローニー判!、と喜び勇んで撮影したら・・・
全部ピンぼけ・・・
うーむ、やはり、あわせないと駄目か・・・
さて、どう調整するか。
本来は、ファインダーでピントをあわせ、
かつ、フィルム面に磨りガラスをあててルーペで覗いた時、
ピントが合うように調整するのが、一般的な二眼レフの調整方法。
今回は、せっかくの冬休みだし(?)、
ちょっと面倒な方法を採用。
レンズのついている前面の板をはずし、
壁と平行に立てる。
磨りガラス(が手に入らなかったので、アクリル板)に、
両方のレンズから入ってくる光をあて、
そこに結ぶ両方の焦点が合っているかどうかを見る。
なんとも、面倒な事をしてしまいました。
でも、その甲斐あり・・・、
完全にピッタリ一致!
調整後に試写したポジをルーペで見た時、
肉眼でも見えないような遠くの風景が、
事細かく記録されている事に、驚きを禁じ得ませんでした。
これが、中判の情報量・・・!
RICOHFLEX VI
Ricoh Anastigmat 80mm F3.5
Kodak E100 GX
1/100秒 F8.0
2009年1月1日
試写したポジを、強引にスキャンしてみました。
真ん中の扉にぶら下がっていた南京錠にピントを合わせました。
ルーペで見ると驚く程シャープにピントがあってますが、
僕のスキャナはフィルム用じゃないので、
その解像力を、直に示す事が出来ないのは残念です・・・
そもそも、手元のPM-A950はブローニー非対応なので、
右半分・真ん中・左半分を別々にスキャンし、
Photoshop上で合成・・・。
しかも、一部、フィルムがよれて浮いている所もあり、
綺麗な正方形になっていません。
ホントは、ブローニー対応のフィルムスキャナが置いてある
「Kinko's」に行きたかったんだけど、元日は開いてないんだわ
シャッターの最高速が1/100秒なので、
ISO100のフィルムでも、絞りがF8~F11~16あたりが適正。
なので、僕が意図する「浅い被写界深度」を画にするには、
フジの「VERVIA50」、ないしKodakの「Ektachrome64」が必須のようです。
(残念ながら、Ektachrome64は製造が中止されたばかり・・・)
一方、室内では、多分、ISO800のネガで、
1/50秒のF3.5開放、ってところかと思います。
ちなみに、新宿西口の「カメラのキタムラ」では、
ブローニーのポジの即日現像をしてくれるので、
今回、大変重宝しました!
人が多い(特に、新宿西口はカメラの街ですし)、
東京ならではのサービスに助けられております。
人生初の中判の世界に、心躍らせているごっさんです。
今年は、スクエアフォーマットのシリーズが増えそうな予感
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