Ai Nikkor 50mm F1.4の内部構造が違っていた件
「This is 糸!」
・・・とマイケルさんが言ったかどうかは定かではありません。
まして、これが中秋の名月のように見えたからといって、
ムーンウォークを編み出したわけでもなかろうて。
・・・
見事な菌糸がはびこっているこのレンズは、
先日購入した、Ai Nikkor 50mm F1.4です。
「全面カビあり」の但し書き付きで1800円。
ショーウィンドーから出してくれた店員さんが、
中を覗いてプッと噴き出す程に見事なカビ。
曇っている様子は無かったので、
綺麗に掃除すれば使えるようになりそう、
そうでなくても、既に持っている50/1.4が、
絞りの調子の悪いので部品取りにでも使えるかな、
という目論みで買ってみた次第。
結論から言えば、レンズの洗浄だけで綺麗さっぱり。
多少、後玉の方のコーティングが食われておりましたが、
写りには影響しないのではないか、というレベル。
しかし、今回この2代目をバラしてみて驚いたのは、
同じAi 50/1.4でありながら、
特に絞り回りの構造が全く異なっていた事。
分解記事は「続き」をご覧頂くとして、
まずは概要を。
こちらのサイトによれば、Ai 50/1.4は、
外観の違いによって5種類ほどに分類されるようです。
以前ばらした50/1.4も、今回ばらした50/1.4も、
マウントが「3つのプラスネジ」で固定されている事、
また、S/Nが、それぞれ43万代/42万代である事から、
Aiとしては最後期の、Ai-S化される直前のバージョンである、
と言えます。
しかし、絞りリングの内部の構造が全く異なり、
分解のしやすさも、歴然とした違いがありました。
今回買った42万代のS/N品に比べ、
43万代のS/Nのレンズの方が圧倒的に分解は楽です。
外観上の決定的な違いは、
「絞りリングに、2つのネジが顔を出しているか」、という事。
もし、Ai 50/1.4にご興味があり、分解掃除をされるつもりなら、
絞りリングにネジが2つ見える物を求められる方が、
メンテナンスが楽だと思いますので、参考までに。
以下、詳細です。
以下に掲載している写真は、
全て、左が今回購入した方(相対的に古い方)、
右が以前購入した方(相対的に新しい方)、といたします。
まずは「仮定」として、
今回取り上げるレンズを、それぞれ、
シリアルナンバーの頭2つの数字を取って、
「42万代(仮)」「43万代(仮)」と区別いたします。
ただ、もちろんの事ですが、
今回の相違が、どのS/Nの時点で変わったのかは、定かでありません。
あくまで、「絞りリングにネジが見えるかどうか」で判断されると良いでしょう。
つまり、こういう事です。
右の43万代(仮)につけた赤い丸が、ネジです。
左の方には見えません。
もちろん、同じ向きに揃えて撮っています。
まず、マウント面の3つの+ネジを外し、マウントを外します。
パッと見は、あまり変わりません。
一応、赤丸部分が少々異なるようです。
次いで、絞りリングを外すわけですが、
42万代(仮)の方は、ネジ止めされていないので、
引っ張れば簡単に取れます
(クリックは金属球ではないので、神経質になる必要なし)
一方、43万代(仮)の方は、くだんのネジを外してやれば、
同じ要領で外せます。
絞りリングを外した状態を、
まず、42万代(仮)の方から見てみます。
赤く着色した部分は、絞りリング内側にある「輪っか」です。
+と-のネジが見えますが
(なめそうになっている所に、苦労の跡が伺える)、
その奥には、絞りを動かすレバーが隠れています。
43万代(仮)の方を見てやると分かりやすいです。
便宜的に赤く塗りましたが、
実際は、さっきのような「輪っか」は入っていません。
絞りリングを取り外せば、既にこの状態。
赤い帯の左の方、2つのねじ穴が見えますが、
ここに、絞りリングの外側からネジ止めされていたわけです。
さっきの42万代(仮)の+と-のネジの裏にも、
これと同じ物が入っており、同様にネジ止めされておりました。
つまり、42万代は、絞りリングの裏に「輪っか」があり、
それと絞りレバーが連結されていたものが、
43万代からは、絞りリングから直接レバーに直結していた、
という事になります。
「輪っか」を外した状態です。
赤線の左が42万代(仮)、右が43万代(仮)なわけですが、
同じ過程までバラしたはずでも、これだけ部品の数が違います。
では、絞りリングと「輪っか」は、どのように連結されているのか。
ちょっと暗くて分かりにくくて申し訳ないですが、
右の赤丸は、絞りリング裏に刻み込まれた溝。
真ん中の赤丸は、「輪っか」に固定されていたネジのうち、
-のネジの方です。
こっちの方は、+のネジと異なり、頭が少し出ています。
この、出ている部分が、リングの溝にはまって連結される、
という事になります。
外観上、ネジを見えないようにするためには、
こんな方法を使って隠してやる必要があるわけですが、
その変わり、部品の数が多くなるのでコストは上がるし、
後からメンテナンスをするのも面倒になります。
こうして簡素化する事で、製造も楽になり、
原価も下がり、メンテナンスも楽になる。
長く製造されている50/1.4ならではの「進化」の軌跡と言えます。
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コメント
時にオイルショックで経済が混乱したり、
CanonがAE-1で「毎度のごとく」価格破壊をしたりしたので、
ニコンとしても、あの手この手で無駄を省こうとしていたのだろうか。
苦労の跡が忍ばれるところである。
投稿: ごっさん | 2010年2月 9日 (火) 22時15分
コレが全く同じ銘柄のレンズとは思えないほど、差があるなぁ・・・
同じようなことが、当方ではミノルタAF75-300(初代)でありましたね。
なんと同じ銘柄のレンズなのに、前期と後期で「前群ヘリコイドの互換性がない」という驚くべきもの。
レンズのコーティングも、似ても似つかないほど違いがある。当然のように、前期型のほうが「見るからにマルチコート」。
不思議と写りに特に差異はなかったのだが、やはり縁起物だと思い、コストの掛かってそうな前期型を手許に残すことになったのでした。
投稿: gochi-zoh | 2010年2月 9日 (火) 16時37分