« 「能登」路の旅は、まだ始まったばかり | トップページ | 「能登」撮りの副産物写真(+「能登」もあり) »

2010年3月 9日 (火)

Canon VL

カメラのデザインの好みは人それぞれ。
例えば「レンジファインダー(RF)」で括ってみたとしても、
ライカと言えばバルナック、いやいやIIIf、いややっぱりM3・・・、
といろいろ意見が出てきそうですし、
やっぱNikon SPか、はたまたContaxか・・・、
という声も聞こえてきそうです。

でも個人的には、RF機で一番いいと思っているのは、
全盛期のキヤノンだったりします。

キヤノンならではの「八角形」スタイルが理由かもしれませんし、
皮やニッケルメッキの質感なのかもしれません。
あるいは、距離計窓が丸いからかもしれません。

最末期のCanon7は、便利ではありますが、
デザインという意味では、ちょっとゴツい気もします。
今でも、Canon Pの人気が高いのは、
機能よりもデザインの秀逸さが秘訣かもしれません。

Imgp133801

先日、3000円という破格ジャンクで購入した、Canon VLは、
そんな僕の「琴線に触れる」RF機の1つです。

「V」はローマ数字なので「5」です。「5L」(ご・える、ふぁいぶ・える)と読みます。

「L」は50の意味だから45か?とも思いましたが、
ローマ数字の45は「XLV」だそうです
(XLが50-10で40、それに5を足す。あー、ややこしい)

キヤノンのレンジファインダーカメラは、
Pや7など一部を除き、本体に機種名が刻印されていません。
そのため、仕様を元に特定していく必要があります。

キヤノンカメラ各型の見分け方 (キヤノンカメラミュージアム)

キヤノンのオフィシャルの見分け方ですが、
これだと1955年以前の機種しか載っていないので、
それ以降のモデルは、個別に開いて確認する必要があります。

年代別1956-1965 (キヤノンカメラミュージアム)

今回買ったカメラの特徴は、

・巻き上げが上部のレバー式(下部のトリガー式もある)
・シャッター最速が1/1000秒(1/500もある)
・高速側シャッターが「中軸指標付き回転ダイアル式」である
(一軸回転、一軸不回転などもある)
・高速側シャッターが1/60秒まで(1/30までのものもある)
・低速側シャッターが1/30秒から(1/15からのものもある)
・フィルム巻き上げがクランク式(ノブ式もある)
・セルフタイマーが付いている
・ファインダーが「35」「50」「RF」の3段切替である

といったところから、上記リンクの通りVLであると判断した次第です。

Imgp132001

こちらの写真には「HEXAR」レンズがついておりますが、
これは引き延ばし用なので、ヘリコイドがついておりません。
撮影用につけてみましたが、よく似合います。
小西六(コニカ)の引き延ばし用レンズです。

そもそも、うちにあるLマウントのレンズと言えば、
このHEXARくらいしかなかったのですが、
先の写真についている「Canon 50mm F1.8」は、
今日、何はともあれレンズを1本、と思って調達してきました。
いつも、上等なジャンクを安価で入手できる代々木カメラさんで、
3本あった中から、6300円のものをチョイス。
ちょっと鏡胴にガタがありましたが、
「曇ってて当たり前」な50/1.8なのにすごくクリア。
それだけで、充分過ぎる程のコンディションです。

本当は、廉価でいい写りのVoigtlanderを頼りにしていたのですが、
最近はMマウントのレンズばかりで、Lマウントがあまりありません。
新品で3万円前後と安価だった、Color Skopar 35/2.5や50/2.5など、
既にディスコンになっています。

じゃあ、と、去年末に発売された、
HELIARの限定50/3.5とか、50/2もいいなぁ、
なんて思って調べてみたら、もうどこにも売っていない。
うーん、Lマウントの限定品って、そんなにすぐ無くなるんだなぁ。

また、折角のRF機なので、
レトロフォーカスじゃない広角レンズ、というものを是非試してみたいです。
同じくVoigtlanderの12/5.6や15/4.5もいいんだが、
Lマウントだと距離計が動かないんだなー。
でも、もうディスコンになったと予想される15/4.5は、
目下3万円台で買えるらしい。うーん、激しく物欲が・・・

その昔、ニコンがニッカに供給していた50mm F2は、
3群6枚のゾナータイプだったそうだ。
と言われるだけでゾクゾクしてくるゾ。

そして問題は、果たして「禁断の」ライカに手を出すべきかどうか。

古くて人気が無くて数が多いレンズは安かったりするんだろうか?
今まで興味を持ったことがないので、皆目見当が付きません。

またまた悩ましいカメラが増えてしまいました。

今回買ったCanon VLのジャンク品は、
各部動作不良、というか、
動くはずのスイッチが動かないとか、
動きにくくなったりとか、という状態で、
持ち帰ってからいじっていたら、
とうとうシャッターも降りなくなってしまいました。

何はともあれ分解して、油でもささなきゃかな・・・、
と思いながら、LEDライトで照らしながら中をジロジロ・・・、

おや?何か入ってるぞ・・・


が、ガラス片!?


しかも、本当に普通のガラス片で、
ファインダーが割れているとか、
フィルムカウンター窓が割れている、とかではありません。

何でこんなのが中に入り込んだのだ?
まぁ、確かにバラされた痕跡はあったけど・・・

結局、それを摘出したら、無事に動くようになってくれました。

分解は、最初はおっかなびっくりでしたが、
慣れてみると、意外にサクサク。
ただ、外さないといけないところが多いです。

■軍艦部を外す

以下の部品等を撤去します。

・シャッターダイヤル(脇の3つのイモネジを緩める。外さなくていい)
・シャッターボタン部フィルム巻き上げロック解除スイッチ(同上)
・ストロボ接点(カニ目を回すと外れる)
・距離計窓(同上)
・フィルム巻き上げレバー(同上、いくつかの部品を外す)
・巻き上げレバー脇サイドのネジ
・フィルム巻き戻しクランク(以下写真参照)
・アクセサリーシュー(距離計調整ピンも。以下写真参照)

これらを外すと、軍艦部を外す事が出来ます。
巻き上げレバー付近のつまみ(カウンターセット用)は、
固いですが外れますので、慎重に持ち上げます。

さて、クランクとシューの外し方ですが、

Imgp127201

クランクは、赤丸のネジ(裏側も)だけ外します。
脇の小さい方は関係ありません。後で戻すのも大変ですし。

Imgp0671

トリッキーなのは、これです。
シューに、外付けファインダーをつけた時、
パララックスを補正するため、このピンが上下し、視野を調整します。

この小さいピン自体が、ネジになっており、
これを外さないと、シューが外れません。

わずかに、脇に溝があるのが分かるでしょうか?
そこに、カニ目回しなどをあてがってやり、回してやります。
マウントの距離計連動レバーを押してやると、
このピン自体も持ち上がるので、作業が楽になります。

■本体をばらす

更に内部までみる場合は、着ぐるみを剥がさないといけません。

いわゆる「もなか構造」なので、意外と簡単にばらせます。

・底カバーを外す(ネジ2つ、三脚穴のカニ目)
・セルフタイマーを外す
・フロント左右2個ずつあるネジを外す
(ネジが皮の中に隠れていないのは、作業上非常に便利ですね)
・マウントを外す(4つのネジ。以下写真参照)
・マウント内側のネジを外す(5つ。同上)
・低速シャッターは、外さなくてよい

Imgp0669

マウント部は、都合9つのネジで固定されています。

マウント自体は、4つのネジを外すと、簡単に外れます。
赤丸は、マウントを固定していた4つのネジ穴です。

青い5つのネジも外します。

大事な事は、これらのネジの位置関係を、
完璧に把握しておき、後で元に戻せるようにしておく事です。

フランジバックの調整が狂いますし
(マウントの裏側に、スペーサー等が挟まっていて調整済みなので)、
そもそも、それぞれネジの大きさや長さも異なっているようです。

これらを外してやると、着ぐるみを外す事が出来ます。

Imgp126601

「もなか」の皮をはがしました。
ヒンジ部で、表裏が繋がっているわけです。

Imgp125801

骨格があらわになりました。
なお、この写真では、セルフタイマーも外しています。

|

« 「能登」路の旅は、まだ始まったばかり | トップページ | 「能登」撮りの副産物写真(+「能登」もあり) »

カメラ」カテゴリの記事

コメント

岩松一実様

コメントありがとうございます。
「続き」の部分、本文として表示されるようにしました。
(投稿したばかりでトップページに表示されていた時に
後半が長くなるので追記ページに表示されるようにしておりました)

投稿: ごっさん | 2023年11月26日 (日) 16時16分

初めまして。
今年9月の松屋銀座で開催された「世界の中古カメラ市」でフィルムカメラに目覚めてしまい、ヤフオクで50mmレンズがついたジャンク品の「CANON L3」を落札しちゃいました。
取り急ぎ、軍幹部を分解してビューファインダー部を掃除してみたいと参考になるブログ等を探したら、ここにたどり着きました。
でも、この文中に有った(毎度の「分解方法備忘録」)が探しきれません。
どこに記載してあるのか、教えていただけないでしょうか。

投稿: 岩松一実 | 2023年11月25日 (土) 00時09分

ごっさんへ。

すいません、ロシア製のLマウントのレンズの焦点距離を書き忘れました。
50ミリF2か、1.4です。ニッコールのレンジファインダー時代のこの2本のレンズは、一眼レフには向かないゾナータイプのレンズです。

投稿: 加納栄一 | 2017年11月11日 (土) 09時43分

ごっさんへ。

キヤノンPはキヤノンの力を感じるカメラで、ファインダーの性能はニコンS3と同じで安かったのですから、当時売れたカメラだそうです。
キヤノンPは35ミリ、50ミリ、100ミリのファインダーフレームがあるのですから。
キヤノンPの登場に対抗して、ニコンが出したのがニコンS4なのですが、価格面で対抗出来なかったのですから。

ニコンのレンジファインダー機は巻き上げレバーを採用したニコンS2から、巻き上げ関係にボールベアリングを採用していて、ニコンは戦後従業員の9割をリストラしての出発だったので、キヤノンのようにキヤノンP量産による低価格化に対抗できず、ニコンS4はニコンS3の一部をスペックダウンしただけなのでかなうわけがありません。しかもニコンS4はニコンSPと同じくシャッター関係の軸受けにもボールベアリングが使われているので、コスト面での対応は不可能だったのでしょう。

ニコンのレンジファインダーのシャッターはニコンⅠ型で設計されたものに改良を続けて、ニコンF、ニコンF2まで使われています。

私にレンジファインダーの手ほどきをしてくれた方は、ニコンがキヤノンよりも頑丈なのは、ニコンはアメリカ海軍と戦った光学兵器を造っていたからだと言っていた世代の人でした。

私はロシア製のレンズの情報があまりありませんが、Lマウントのニッコールと同じレンズ設計のLマウントレンズがあれば、手に入れるとおもしろいかもしれません。マルチコーティングされてるとの話ですし、ノクトニッコールが目指した性能を持っているはずですから。これは私の、私信ですが。

投稿: 加納栄一 | 2017年11月11日 (土) 08時17分

加納栄一様

現状、LマウントのレンズはJupiter-12(35mm)だけ、と言って良い状況ですので、
Pのファインダーで充分事足りております。
一応、コムラーの135mmも持っておりますが、
これが、Pのファインダーでも案外撮れるもので、
「脳内パララックス補正」(?)も意外と侮れないものです。

VLがそんな希少種とは知りませんでした。
いつかはちゃんと直して使えるようにしてあげたい、とは思っておりますが…。

投稿: ごっさん | 2017年11月11日 (土) 01時55分

キヤノンの交換レンズ用のファインダーはどのようにしていますか?

キヤノンのⅤ型、L型、Ⅵ型用のファインダーは連動ピンによりパララックスの自動補正をしてくれますが、キヤノンPに使うときにはアクセサリーを必要とします。レンズはキヤノンPのファインダーにあるものを使っているのですか。

キヤノンの光像式のファインダほ、ズームファインダーは多種多様なのは良いのですが、知識がないと手に入れるのにはかなり泣きすね。

投稿: 加納栄一 | 2017年11月10日 (金) 22時47分

ごっさん、ご返事ありがとうございます。

ⅤLはキヤノンのレンジファインダーでは生産台数が少なく、約3000台の生産と言われています。
トリガー巻き上げを含めてⅤ型、Ⅵ型はボディーのブラックペイントの帯は、ペンキではなく漆塗りと言われています。

レンジファインダーはニコンを使い込んだので、キヤノンのレンジファインダーを使ってみたくて手に入れたのですが、ほとんど使っていません。キヤノンの一眼レフは使い込んだのに。

投稿: 加納栄一 | 2017年11月 9日 (木) 22時06分

加納栄一様

コメントありがとうございました。

結局、その後もVLのシャッター幕は修理せずそのままで、
いつかは、と思って静態保存の状態です。
その後「Canon P」を購入した事もあり、
Lマウントで撮影する時はこちらで撮影しています。
とはいえ、最近はそれも1,2年に一度の事になってしまっております…。

投稿: ごっさん | 2017年11月 8日 (水) 01時25分

シャッター幕リボンの破断の修理は、もうおできになりましたか?
私のⅤLのシャッターリボンも、破断しました。

ステンレスシャッター幕のリボンの破断は多いようで、チタン幕に交換されてるボディーをよく目にします。
まだNewF-1の修理受付け期間であったため、チタン幕に交換修理出来たのを思い出します。

投稿: 加納栄一 | 2017年11月 6日 (月) 19時43分

Patalobun様

コメントありがとうございました。

ファインダーの曇り、原因が何か分かりませんが、
カメラの分解が未経験という事であれば、
やめておいた方が良いだろう、と思われます。

VLは、トップカバーを外すのにコツがいります。
本文だと簡単そうに書いてありますが、
「慎重かつ大胆に」やってますので、ひとつ間違えると、
部品が歪んで元に戻らない、という事も起こりえます。
というか、その確率は高いと思います。

首尾良くばらせたとして、距離計回りは精密に組まれており、
仮に掃除して曇りが綺麗になったとしても、
元の精度を維持出来るか(距離計が完璧に合うかどうか)、
必要な道具を揃えたり、調整したりするのが相当大変です。
また、ファインダーの掃除をする際、
ハーフミラーをうっかり掃除すると、
距離計が見えなくなり、ピント合わせが出来なくなります。
その場合、ハーフミラーのシールを貼って代用する方法もありますが、
そういった作業も、必要材料を揃えたり、調整したりがあるので、
簡単にはいかないと思います。

そういう作業を代行して行うのが修理屋なので、
修理代が高くなるのは、やむを得ないところかと思います。
恐らく、3~5万くらいの見積もりが出た事と思いますが、
工賃や、場合によっては部品代(曇りだと、掃除では落ちない可能性あり)
を考慮すれば、その程度にはなるかな、と思われます。

ちなみに、うちのVLは、その後、シャッター幕リボンが破断し、
修理しようと再度分解しましたが、諦めまして、
現在、ラックの中で静かに眠っています。
いろいろいい写真を撮ったカメラなので、
いつかは、高い負担を覚悟で修理に出したいところですが、
なかなかそうもいかないのが現実です。

ここなら直してくれるかな、と思うところを、
既に見積もりされたところも入っているかもしれませんが、
参考までにいくつかリストアップしておきます。

muk camera service
http://blog.monouri.net/

東京カメラサービス
http://www.tokyo-camera-service.com/

ユーシーエス
http://www.u-cs.co.jp/

関東カメラサービス
http://www.kanto-cs.co.jp/

ハヤタカメララボ
http://www.hayatacamera.co.jp/

投稿: ごっさん | 2014年4月 4日 (金) 00時24分

ごっさん!はじめましてです!
つい昨日、デイサービスの高齢者の旦那さんのCanon VLを引継ぎました。
歴史を感じさせる風貌にウットリですが…。
ファインダーが曇ってる!素人でも直せますか?
どこのカメラ店に連絡しても、べらぼうな価格で返答が来てビックリしています!

投稿: Patalobun | 2014年4月 3日 (木) 11時14分

MoBlue様

L1ですか。デザイン的には、VLからセルフタイマーを撤去、
って感じですかね。

VLの他に7も持ってますが、
やはり、VLの方がデザイン的には好きですね。
しかし、距離計窓の円いリングが欠けていたので、
長徳先生に言わせれば全く価値のないカメラ、
という事になりそうです(笑)

投稿: ごっさん | 2011年2月17日 (木) 22時18分

どうもです。L1をゲットできたので検索かけましたら、表示されたです。
良さげな一品ですねー
やはり、シャッター幕が金属製のようですね。

投稿: MoBlue | 2011年2月16日 (水) 09時22分

南東風様

はい、なんでもバラしちゃいます(笑)
実は、その前にCanon A-1も買ってバラしたのですが、
こちらはまだ直っておりません。
電子カメラは、なかなか手強いです。

南東風様は、VL2か何か、って事でしたね。
アクセサリシューのパララックス補正機構は、
135mmのような望遠では非常に役立つ、
というか必須だったみたいですね。

Voigtlanderの15/4.5がモデルチェンジし、
Lマウントの方はディスコンになったみたいなんですが、
在庫処分で3万円台後半になっている・・・、
いいなぁ、欲しい・・・
(こうしてLマウント沼にはまっていくのですね)

投稿: ごっさん | 2010年3月10日 (水) 00時41分

凄いですね、何でもばらせるんですね。
小生のカメラにそっくりですが、
小生のは最速500分の1で巻き上げレバーも微妙に違うようです。
早いとこ探し出して報告します。
しかし
アクセサリーシューに付いてるビューファインダー調整用の玉は懐かしいです。
あんまり役に立ちませんでしたが。

投稿: 南東風 | 2010年3月 9日 (火) 23時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「能登」路の旅は、まだ始まったばかり | トップページ | 「能登」撮りの副産物写真(+「能登」もあり) »