「被写界深度」の「深い・浅い」誤用の件
これは、Ai Nikkor 50mm F1.4に、
アタッチメント(中間リング)をつけて撮影した画像です。
左は、確か絞り開放、右は、F5.6だかF8くらいまで絞って撮ったものです。
絞りを開けると、どこにピントが合ってるかも分かりづらいくらいボケボケですが、
絞り込んでやると、PENTAXの文字はハッキリと読み取れ、
機種名の*ist Dsも、かろうじてやめるようになっています。
カメラや写真の事が分かってくると、
いわゆる「ボカし方」を意識した写真を撮りたくなるものです。
人間+風景、という組み合わせの場合、
絞りを開けて背景をボカせば人間主体のポートレートに。
絞りを絞れば、人間も背景もピントのあった記念写真に。
写真には常に、ピントのあう範囲である
「被写界深度」という概念がついてまわってきます。
今回は、その「被写界深度」に関する誤用について。
作例左のような、ボカした写真の事を
「被写界深度が浅い写真」と言います。
一方、右のような、あるいはもっと全面のピントがあう写真を
「被写界深度が深い写真」と言います。
最近、ネットサーフィン(死語)をしていると、
左のようなボカした写真を
「被写界深度が深い写真」と表現する人が多いと感じるのです。
これは、もちろん誤使用なのです。
ボカした方が奥行きがあって、立体感のある写真になります。
単に「深度」という意味では、確かに深い写真なのです。
つまり「深度の深い写真」、と言えば、まぁ間違いではない。
そもそも、「被写界深度」とは何か?
「被写界」の漢字3文字をバラしてみますと、
まず、「被」は写される物、人の事ですね。
「写」も当然、写す、写される、という事。
ここでは、ちゃんとピントの合っているかどうか、という意味だと思います。
「界」は、世界の界、ですが、辞書を見ると「境、区画」という表現があります。
並べて見れば、意味合いとしては「写されるモノにピントがちゃんと合う範囲」、
という感じになるんじゃないでしょうか。
とすれば、「被写界」が「浅い」という事は、
ピントの合う範囲が浅い、狭い、薄い、という事になります。
「被写界」が「深い」という事は、
ピントの合う範囲が深い、近くから遠くまでピントが合っている、
という事ですから、いわゆるパンフォーカスの事になります。
つまり、被写界深度(=ピントの合っている範囲)の浅い・深いと、
写真全体として奥行きがある(深い)か平面的か(浅い)かは、
全く別次元の事だ、という事です。
なので、作例左の写真は
「被写界深度が浅く、奥行きの深い写真」と言えるわけです。
慣れないと「???」になりそうですね。
とりあえず、誤用をよく見かけるもので、ちゃんと整理してみました。
| 固定リンク
「写真」カテゴリの記事
- PEN EES-2散歩(1) 生麦駅(2022.07.10)
- 小島新田から羽田への散歩(Yashicaflexを手に)(2022.06.16)
- Lomography DigitaLIZA+を導入、デジタルデュープの決定版となるか?(2022.06.12)
- 今日のヒマワリ(21/8/4)(2021.08.04)
- 今日の向日葵(21/8/1)+カブトムシ(2021.08.01)
コメント
日頃鉄道撮りで慣れているせいか、
ボカす写真を、無意識に撮らない習慣がついています。
それが自分の写真の欠点なんだろうな、と思っておりますが、
相当意識的にボカそうと思ってもなかなかそうはいかず、
写真を撮るのは難しいと悩むことの多い今日この頃です。
投稿: ごっさん | 2010年7月 4日 (日) 00時42分
昔は確か「焦点深度」と言っていたと思いますが
同じ意味ですよね。
ポートレートモードでの背景ボカシ、
最近はネコ撮りにしか使っていません。。。
投稿: 南東風 | 2010年7月 4日 (日) 00時28分