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2010年8月 1日 (日)

銀Tessar~古(いにしえ)の「鷹の目」

Dsc_4782tessar

「3群4枚」「鷹の目」「パンケーキ」「マクロ」。

テッサー(Tessar)型のレンズを語るとき、
一緒に連想されてくる言葉を並べてみました。

今となっては「Cyber-Shotに搭載されているレンズ」
程度の名称価値しかないテッサーですが、
「最低限のレンズ構成で最高の写り」をする構成として、
もう100年近くも前から、
代表的な標準レンズとして重宝されてきました。

※以前、1920年頃製と思われる
「Tessar 15cm F4.5」を購入して、エントリにあげた事があります。

僕自身、「いつかはテッサー」と思っておりましたが、
先日、ヘリコイド固着のジャンクを3000円で見つけました。
いわゆるM42マウント(正式にはPマウント)の玉です。

カビも生えてましたが、曇りは軽微(若干認められる)であり、
これなら整備できるだろう、と思って買ってみました。

ヘリコイドの分解はたやすく、
マウント面にある大きいネジ2つは、
直進ヘリコイドのガイドレールそのものであり、
これを外してくるくる回すと、マウント部とレンズ部が分離。

マウント部内側のネジを外すと、
ヘリコイドの回転部分もくるくる回って外れますので、
双方、ベンジンに浸したり拭いたりして云十年の固着を清掃、
新しいグリスを塗って完成。

カビは、後群のカニ目を回してレンズを外し、
古いコーティングなので傷がつかないよう、
愛用のベビー用綿棒にKodakのクリーニング液をつけて清掃。
すっかりときれいになりました。

Dsc_4786tessar

ところで、このレンズ、マウント部が後ろに出っ張っており、
SPやMX、MZ-3などPENTAXのカメラに取り付けると、
シャッターを切った際に跳ね上がったミラーが引っかかり、
降りてこなくなる、という問題があります。
(*ist Dsだと、ミラーがそもそも小さいので問題ない)

ただ、引っかかるとはいっても、本当に「かする」程度らしく、
すこしマウントへのねじ込みを緩めるだけで降りてきます。

ならばと、紙でスペーサーを作ってはさんでみたのが、上の写真。

結果はGoodで、上記3機種で試してみた限り、
ちゃんとミラーは元に戻ってくれるようになりました。

スペーサー挟んだので、本来真上に来るべき赤い指標が、
斜め横までしか来ていないのが分かります。

また、本来この状態だと、無限遠が出なくなるはずです。

ところがこのレンズ、
分解後にヘリコイドの調整をしてみますと、
どう頑張っても「わずかにオーバーインフ」なセッティングにしかならなかったのです。
って事は、この状態だと、逆に無限が出るはず・・・

という読みは正解で、「ちょっと厚めの紙」でスペーサーを作ると、
逆にバッチリ無限が出るようになりました!
ちなみに、0.3mmのプラ板だと無限でなくなったので、
この紙は0.1~0.15mmくらいの厚さなのかな、と思われます。

Dsc_4780tessar

見た目はちょっと不恰好になりましたが、
実用性の上では、「PENTAXのカメラで使えるようになった」ので、
逆に好都合だったな、と喜んでおります。

※同じレンズでも、常に同じ結果になるとは限りません。
古いものでもあり、今回はたまたまうまくいっただけかもしれないので、
もしお手持ちの同じレンズで同じ事をやってもうまくいかなかったとしても、
責任は負いかねますのでご了承ください。

さて、肝心の描写はどんなもんでしょうか。

Imgp1651tessar
PENTAX *ist Ds
Carl Zeiss Jena Tessar 50mm F2.8 T
1/1000秒 F4.0 (ISO200)
2010年7月17日

先日の中央線撮影の時に撮ったスナップから。

これは、F4に絞っての撮影。
開放だと、さしものTessarと言えども古いレンズなので、
現代の感覚だと「鷹の目」には落第かな、という印象。

でも、1段絞るだけで、すっかり「現代的」なシャープな写りに。
ボケは、テッサーだけに「美しい」とはお世辞にも言えなさそうですが、
今風のレンズよりも深度があり、奥行きのある描写になっている気がします。

Imgp1709tessar
PENTAX *ist Ds
Carl Zeiss Jena Tessar 50mm F2.8 T
1/1000秒 F2.8 (ISO200)
2010年7月31日

これは今日撮った写真。
我らが?PENTAXのサービスステーションが入っているビルを、
下から見上げてみました。

さっき、開放ではちょっと・・・、と書いたところですが、
これは、その開放で撮ったもの。
縮小してみる限りでは、十分実用の範囲内。
等倍に拡大してみると、ところどころ滲んだりしています。
ひょっとすると、若干の曇りが影響している可能性もあります。

このアルミ鏡胴のTessarは、
恐らく1950年頃に作られたものです。

製造国は「Germany」としか刻印されておらず、
東西分裂の前か、その直後頃の製造と考えられるからです。

当時はPマウントが一般に広まりだした頃で、
言わば「M42なテッサーの元祖」とも言えるレンズ。

単層コートの証「T」の文字が美しいレンズ。

あえて開放で古臭い画を撮るもよし、
1段2段絞って「現代風」に撮るもよし。

なかなか「そそられる」レンズです。

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