「劣悪ジャンク」ニコイチで復活~トプコン「UNIREX」
「一眼レフのカメラ」の構造を理解すると、
この世にかつて「レンズシャッター式の一眼レフ」
というものが存在したとは、にわかには信じられないだろうと思います。
レンズシャッターという事は、シャッターはレンズの中にある。
しかし、一眼レフというのは、本体内のミラーによって、
そのレンズを通ってきた光をファインダーに届ける事により、
被写体を観ることができるわけで、
本来は「撮影時」以外は閉じたままであるはずのシャッターが、
レンズの中にある、なんておかしい、という理屈です。
でも、実際に存在したのです。
海外だと、Kodakのレチナのシリーズにありますし、
かのContaxにも「コンタフレックス」というカメラがありました。
国内だと、興和(あの、コルゲンコーワの、コーワ、です)が有名ですし、
今回ご紹介するトプコン(東京光学)も、
様々なレンズシャッター式一眼レフを製造しておりました。
レンズシャッターの一眼レフは、理屈だけで言えば、
現代の「ミラーレスカメラ」に通じるものがあります。
オリンパスのPENや、SONYのNEXなど、
昨今話題?のミラーレスカメラは、
一眼レフにつきもののミラー&レフレックスを省略し、
CCD(CMOS)に届いた像を液晶(ないしEVF)に映し出す事で、
「コンデジ感覚」での撮影を可能にしています。
つまり、撮影していない状態でも、
常時光はセンサーまで届いている、シャッターは開きっぱなし、
という事になります。
それが、いざ撮影、と思ってシャッターを切ると、
「シャシャシャシャ」、と何度か音がするのが聞こえます。
その時シャッターは、「一端閉じる」「また開く=本番のシャッター」
「また一端閉じる」「また開く」という動作をしています。
レンズシャッター一眼レフも同様で、
パッと見、シャッターはずっと開いているように見えるんですが、
実際シャッターを切った時は、瞬間閉じる動作を、2回行っています。
あまりに高速なので、シャッターが「一端閉まる」動作をしているのを、
肉眼で見ることが、ちょっと難しいんじゃないかな?、と思うほどです。
一般に、レンズシャッター一眼レフは構造が難しくて、
壊れていてもなかなか直せない、と言われておりますが、
今回、ちょっときっかけがあって、トプコンのUNIREXを直す事になりました。
そもそもは、このUNIREXに取り付けられるレンズ、
「UV TOPCOR」の50mm F2を、
横浜某所の某氏(笑)より頂いた事が、全ての始まりでした。
UV TOPCORを、「M42化」するアクセサリが存在する、
というのは前から知っていたので、じゃあそれでデジイチに付けてみるか、
と思っていたんですが、
このアクセサリには、「UNIREXのマウント」が必要、との但し書きが。
えー、じゃあ、安いUNIREX探すかー、でも、無いだろうなぁー。
と思ってオクを見てたら、意外なことに、
1000円以下で2台も落札する事が出来てしまいました(笑)
それぞれ、部品取りか研究用にしかならないような、
ヒドイ状態のジャンクでしたが、
幸い、それぞれ、おかしなところが分散していたので、
それじゃあ、と一念発起して、ニコイチ修理に挑戦してみました。
1台の方は、巻き上げレバーを操作した時に、
シャッターをチャージする部分の部品が壊れていたのが致命的で、
また、外装も汚かったものの、中枢であるシャッター自体は、
かなり快適に動いてくれてました。
もう1台は、見た目は全然キレイだったものの、
シャッターにグリスのようなものが流れ込んで固着しており、
また、巻き上げ機構にも不具合がありました。
よって、「外装の汚い本体の中身」と、
「外装がキレイな本体の外側」を足す感じのニコイチになりました。
本当は、露出計もちゃんと直して、
「シャッター優先EE」で撮影できるところまで追い込みたい、
と思ったんですが、とりあえず「カメラとして機能する」状態に持ち込むだけでも、
相当時間と労力を使ってしまったので、
そちらは、また次の機会に挑戦してみたいと思います。
ちなみに、肝心の「レンズシャッターを、閉じて開いて閉じてまた開いて」
の部分は、思っていたよりは全然簡素な構造、というか、
セイコーシャ製のシャッターが、そもそもそういう作りをしていたらしく、
動作自体は非常に分かりやすくてシンプルなものでした。
シャッターの開閉動作、ミラーの上下動作は、
それぞれ、底蓋を開いたところに見える2つのレバーと連動していて、
「シャッターが開いたままミラーが上がってしまう」
というような自体が発生しない作りになっています。
とりあえず、所定の動作(っぽい動作)をし始めてくれた時点で、
「おー、動いてるよー」と、にわかに信じられないような感じでしたが、
その状態で、とにもかくにも試写をしてみました。
何となく、埼京線で板橋に行き、フラフラ歩いてる時に撮ったものです。
※いずれも、
TOPCON UNIREX
UV TOPCOR 50mm F2
Kodak Gold 100
1/125~250秒 F4~5.6
(2枚目)東武東上線 下板橋駅
2011年8月11日
トプコールは、ニッコールと並び称される銘玉、
と言われる事もありますが、今回撮った50mmは、
前玉に拭き傷が多くあったためか、2枚目のように、
少々ハイライトが滲む結果となりましたが、
ピントのシャープさは、カミソリと言っていいくらい、見事なものでした。
色合いは、(あまり好きな表現じゃないですが)少々レトロな感じで、
くすんだ、と言うよりは、かなりダークな印象を受けました。
UV TOPCORのマウントを搭載したカメラは、
口径の小さなレンズシャッターがマウント面にある事から、
レンズ設計上は相当無理がある構造です。
135mmや200mmという望遠レンズもあったみたいですが、
マウント側の径の小ささに対して、前玉が異様に大きいです。
トプコンのレンズ設計者の方は、きっと、
「誰じゃ、こんなマウント考えたヤツは!」
と怒っていたに違いありません(笑)
いろいろ無理のあるUV TOPCORのレンズ群は、
開放F値が暗めである事もあってか、値段も全般的に安めです。
しかも、全部揃えたとしても10本に足りない数しか出てないはず。
何年かかるか分からないですが、UV TOPCORは全部揃えたいなぁ、
と思っています。特に、28mmと35mmが気になります。
50mmも、もっといい状態のがあるといいなぁ、と。
何か、また新しく、違う沼に引っかかってしまったようです(笑)
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コメント
あ、ペンタックスは日本におりますよ。
リコーに買収される事になっております。
ブランドだけは、HOYAがガッチリ握っているのでは、と。
トプコンは内視鏡、コーワは望遠鏡など作ってますので、
光学技術は細々と受け継がれています。
ヤシカのブランドは、既に中国企業の意のままになっています。
東上線の東急は、来るべき副都心線経由の乗り入れに備えて、
訓練運転などを行うために入線しているとの事でした。
東横線に合わせるために、有楽町線なども8連を走らせる必要に迫られ、
確かに迷惑だろうなぁ、と思います。
投稿: ごっさん | 2011年8月27日 (土) 00時02分
おおっ、カメラのイセキがリンク先に加わっていますね。
Pタックスのブランドがいつの間にか
隣の国に行ってしまったことを
ついこの前知りました。
トプコン、コーワ、ヤシカの技術はどこに行ったのでしょう。
国外に散逸してなきゃ良いんですが・・・
ところで
東上線沿線に住む同僚が東急の電車が居たと驚いてました。
8両編成は迷惑だそうです。
投稿: 南東風 | 2011年8月26日 (金) 23時50分