「特別電車「小田急F-Train」の車体ラッピングの終了について」(小田急・PDF)
何とも信じられないニュースです。
8月に走り出したばかりの、「ドラえもん電車」、ことF-Trainが、
9月末日で突然の運転中止。
プレスリリースによると、理由は2点あげられています。
1.許可申請を実施しなかったこと:東京都屋外広告物条例第23条
2.広告物の面積が基準(車体1面の10分の1以下)を超えていたこと
東京都屋外広告物条例施行規則第19条
※参考
東京都屋外広告物条例
東京都屋外広告物条例・施行規則
1.については、小田急法務部の失態と言えるでしょう。
(小田急規模の会社に法務部が無いって事はないでしょう。
大変な裁判も抱えていた事ですし。)
過去、広告電車を走らせた事があったのか無かったのか、
定かではないですが、そういう条例が存在する事は、
やはり知っておくべき事でした。
ただ、2.に関しては疑問は残ります。
特に気になったのは、2年前に走っていた、
山手線のチョコレート電車の事です。
※当時の『鉄道ファン』のニュース記事
※Google画像検索の検索結果
全身を茶色に塗った(正確には「貼った」かもですが、細かいことは置いといて)電車は、
まごう事なき「編成まるまる明治チョコレートの宣伝電車」だったではないか、
と思うわけです。
でも、そう思うのは、この電車を「生」で見たことがあるからです。
この電車が走り出した時、あちこちのニュースサイトで取り上げられましたが、
どの記事にも、明治チョコ云々は載ってませんでした。
あくまで「山手線開通100周年記念」「懐かしい茶色の電車復刻」
としか書いてありませんでしたし、
また、「側面」をはっきり写した写真も出てませんでした。
そのニュースを一通り目にしていたので、
実際、生で走っている姿を見た時は
「うへ~、なんじゃこりゃ~~」と驚いたのを覚えています。
なんせ、「復刻」を謳っている割に、色は濃茶なので「ぶどう色2号」ではない。
そして、あちこちに書いてある「明治チョコレート」の文字やロゴ。
どこをどうみても、これは「宣伝電車」だな、と思いました。
ニュースで流れている「100周年」の話しと、
実際生で見た「チョコレート電車」の相違に、
何か歯に物が挟まったような矛盾を覚えたものです。
でも、今回の一件で、なるほど、と合点がいきました。
茶色いのは、あくまで「100周年」のための特別なカラーリングであり、
そこに「明治チョコレート」の文字やロゴがある事(すなわち「宣伝」)とは、
相関関係はない、という言い逃れだったのでしょう。
実際、あれだけ「100周年」という部分だけが報道されれば、
茶色い理由は「復刻」である、という既成事実が出来るので、
実物を見てなければ、そういうものなんだ、と自然に思う事でしょう。
でも、ホンモノをみれば、あれが「ぶどう色2号」ではない事※、
そして、あれは「明治チョコレートを宣伝するための茶色」
である事は、一目瞭然であった事と思います。
※ぶどう色2号云々は、分かる人にしか分からない話ですが。
マスメディアまで巻き込んでの「条例逃れ」とは、
JR東日本(ないし、裏で動いている広告代理店)のやる事はずるがしこすぎます。
※しかし、「施行規則第19条」自体が、
チョコレート電車以後に取り決められたもの、
という可能性もあります。そこまで調べがつきませんでした。
ところで、この「ドラえもん電車」、
まぁ確かに「宣伝」のための電車ではありました。
一応、先ほどの小田急のプレスには
「広告には該当しないものと認識」とありましたが、
時期的な事を考えれば、先日オープンした
「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」宣伝のためだろう、
と自然に感じる事だと思います。
でも、この電車に既に3,4回ほど遭遇した者の目には、
それ以上に「夢を運ぶ電車」だな、という印象を強く持ちました。
F-Trainがホームに滑り込んでくると、
ホームにいる人達の目がキラキラと輝き始め、
やおらケータイなどを取りだし、パシパシ写真を撮っていました。
きっとその後は、その画像を友達にメールしたり、
ブログやTwitterにアップしたりと、
それぞれに、その喜びを発散していた事だと思います。
東京に10年近くいますが、
これだけ人々の注目を浴びる「通勤電車」は見たことがありません。
それを、「条例違反」という、しかも、別に人を殺したとか、
税金をちょろまかしたとか、そんな重篤な犯罪・脱法行為をしたわけでもないのに、
いきなり手打ちで中止に、というのは対応が厳しすぎると感じます。
ただでさえ、人々が夢や希望を失い、
自分以外の他人を信用する事ができない世の中になりつつある、
殺伐とした2011年だからこそ、こういう電車を走らせる事には、
宣伝を超えた意味があると思います。
小田急の落ち度と、現実として条例に引っかかっていた厳然たる事実はありますが、
単に「もう運転やめます」ではない、新しい「夢」を用意してもらえないか、
と強く願います。
PENTAX K-7
SIGMA 12-24mm F4.5-5.6 EX DG ASPHERICAL (12mm)
1/30秒 F4.5 (ISO800)
小田急 新宿駅
2011年8月24日
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