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2011年10月21日 (金)

写りも「ピカイチ」?Nikon L35AD ~「ゾナー型」は何のため?

昨今のミラーレスカメラもそうですが、
よく「一眼レフみたいな写り」「一眼レフ顔負けの写り」
という表現が用いられます。

総じて、一眼レフ用の方が「いいレンズ」が多く出ているからだろうなぁ、
と思いますが、考えてみれば、例えばライカは「一眼レフ」じゃないので、
厳密には、この言い方はおかしい、と言う事も出来ます。

まだフィルム時代は、カメラと言えば「一眼レフ」か「コンパクト」か、
の二者択一が原則でした。
(よく、後者は「バカ○ョン」と評されておりましたが、
ふさわしくない言葉のため、現在では使ってはいけない事になっております。)

何物にも「ピンとキリ」があるもので、コンパクトカメラにしても、
10万円もする高級なカメラもあれば、
「フィルムの入れ替えが出来る写ルンです」か、というような安いのまで、
数々の製品が世に存在しました。

当然、その間に位置するような「普通のコンパクトカメラ」が一番多いわけですが、
その中には、「一眼レフも顔負け」(と、早速言ってみたりする)の、
実によく写るカメラが存在し、時に「伝説」になる事もあります。

先日500円ジャンクで購入したL35ADも、
そんな「伝説」がつきまとってくるカメラの1つです。

Imgp6069

渋谷の「キタムラ」は、コンパクトカメラのジャンクが豊富で、
迂闊に近づくと、何か1つ位は「あ、これは!」というのがあって、
しかも500円低度と安いので、大変「危険地帯」なんでありますが。

※ちなみに、ジャンクの原因はセルフタイマーレバー故障による動作不具合。
分解修理しました。写真は撮り忘れました。(苦笑)

このL35AD、通称「ピカイチ」と呼ばれるカメラは、
ニコンが「初めて作ったコンパクトカメラ」として知られるものです。

同時期にペンタックスが作った「初めてコンパクトカメラ」である、
PC35AF「オートロン」も、銘機として知られるカメラです。
どちらも、「一眼レフを専業とするメーカーが、
初めてコンパクトに挑戦したら、どこまで手を抜いていいか分からなかった」
とでも思えるようないいカメラで、
特にレンズの作りの良さには定評があります。

L35AD(デート機能の無いモデルはL35AF)のレンズが「伝説」扱いされるのは、
もちろん、実際本当に写りがよいせいもありますが、
ニコンの「ニッコール千夜一夜物語」で取り上げられた事も、
決して無視する事の出来ない影響を与えているはずです。

「ニッコール千夜一夜物語」
~コンパクトカメラに搭載されたニコンレンズ~
第三十三夜 ピカイチL35AF・35mm F2.8

これによると、L35AD(AF)に搭載されているレンズは、
4群5枚の「ゾナー型」である、と記されています。

「テッサー」とか「ゾナー」と聞くだけで、
色めき立ってしまう人類が、この世にはおります(笑)

実際、このレンズをLマウントに改造して、
レンジファインダーカメラで使用する例もある
くらいです。

ただ、レンズ構成が「ゾナー型」であるから写りが優秀、
と考えるのは早計です。

というのも、このカメラ、1983年製、
まだAFカメラが世に登場し始めた頃のものです。
当然、「AF精度」も、今のカメラほどよろしいものではない。

実際、分解してメンテした時、AF稼働部を覗いてみましたが、
AFのステップは全部で10段ほど(正確に数えるのを忘れてました)。
この被写体ならこの距離でドンピシャ、というところにピントが合うとは限らないのです。
(そもそも、被写体までの距離を正確無比に測れているかどうかも?
一応、ファインダー内に指標が出てくるので目視確認できる、とは言え)

しかし、この「千夜一夜物語」の以下の記述を読むと、
あぁなるほど、と納得がいくのです。

> 非常に特徴的なことは、若宮氏はゾナータイプを選択し、
> シャープネスを最大限引き出しつつ、
> 見かけ上の被写界深度を出来る限り伸ばす設計を行っていることでしょう。

ニコンの技術者は、当然ながら、AFコンパクトカメラのピント精度は、

「そもそもちゃんと測れるか」

「測れた距離にピントを合わせられるのか」

という2つの問題を抱えていた事は承知していた事だと思います。

もちろん、「ちゃんと測る」「ちゃんと合わせる」事が出来れば、
何も問題はないんですが、まだそこまでの確かな技術がない。

もし「計測」「合焦」ともに完璧であるなら、
何もゾナー型にせずとも、3群4枚の「テッサー型」で事足りるはずです。
「鷹の目テッサー」と言われるくらいで、
世のコンパクトカメラの多くはテッサー型を採用していました。
(より安いカメラは、「中心部だけ鷹の目」の、3群3枚「トリプレット型」を採用)

でも、現実には、そう完璧な条件下での撮影は困難である。

それなら、「完璧に合焦」してなくても、ちゃんと合っているように「見える」、
そんなレンズのために、ゾナー型を選択したのではないでしょうか。

以下に作例をあげていますが、
こうして縮小すると、非常にシャープな描写で、
何の問題もないように見えます。
しかし、ピクセル等倍にしてみると、意外と「んー?」と思えてくる。
ドンピシャでガッツリとピントがあっている「わけではない」のです。

ある程度明るければ、絞りが絞られるから被写界深度が深くなり、
ピント幅にも余裕が出来るのも、もちろん理由の1つだと思います。
でも、そもそものレンズ設計自体が「合焦深度に幅を持たせてある」
ような作りなのかな、と、撮影の時点でうっすらと感じました。

ピカイチが「非常によく写る」と評判だった理由も、
有無を言わさぬ高性能な写りだったから、というよりも、
万人が撮影して平均点以上の結果を返してくれるレンズだったから、
という事だったのかもしれません。

111006_16

111006_21

(※以上、2枚)
Nikon L35AD
Kodak GOLD100
2011年10月6日

※2枚目は、なんとキンモクセイです!
時々大木を見かけますが、
家から駅に歩いていく途中にもあるとは思わず、ピカイチを向けてみました。
この写真は先日、「PLA-CAME Gallery」にも載せて頂きました。

111008_11

(※3枚目)
Nikon L35AD
Kodak EKTAR100
徳島公園
2011年10月8日

※デートの日付が「81年」になっているのが気になるかもですが、
このカメラの日付は「1980~2009」年しか設定出来なかったため、
「一巡して戻った」と仮定して、今年は1981年、という事にしております(笑)

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