興和の工業用レンズ「LM16XC」で撮る
「興和」という会社名を聞くと、
何を真っ先に思い出すでしょうか。
やはり、「キャベジンコーワ」「ウナコーワ」「キューピーコーワ」
といった薬品類を思い出す方が多いのではないでしょうか。
あるいは、そんなコーワのイメージキャラクター?である、
カエルの「ケロちゃん」を連想される方も多い事でしょう。
そんな興和が、かつてはカメラやレンズを作っていた、
という事実は、ご存じない方も多いのでは、と思います。
1970年代末にはカメラ事業から撤退しているので無理もないですが、
その頃の名残で、今もスポッティングスコープを作っているので、
いまだ「光学機器メーカー」としては第一線にあります。
そんな、「光学機器」のメーカーとしての興和が、
工業用の超ハイスペックレンズも作っている、というのは、
僕も最近まで知りませんでした。
今回取り上げる「LM16XC」というレンズも、そんな「超ハイスペックレンズ」の1つです。
※奥に見えるのは、かつて興和が作っていた「ベスト判」の一眼レフ、「Komaflex」です。
もう購入して1年以上になりますが、なかなかここに書ける程の成果がなく、
ようやくチラリとご登場願いました。
主に製品検査など工場内の製造ラインで用いられる工業用レンズ、
用途が用途だけに、「完全無収差」の設計がなされています。
興和の工業用レンズの中でも最も新しいシリーズである「XCシリーズ」は、
Cマウントの工業用レンズの中では極めて異例の「4/3型」のイメージサークルを持つレンズです。
4/3型と書きましたが、つまりは「フォーサーズ」です。
Cマウントのアダプタを使えば、オリンパスやパナソニックのミラーレス、
「マイクロフォーサーズ」規格のカメラに取り付ける事が可能です。
で、今回は、そのXCシリーズのレンズを、
無謀にも、APS-CセンサーのNEX-5で使うとどうなるのか?
同レンズを写真用に販売している「muk camera service」の小菅さんから、
テストモニターの依頼を受けてお借りしてきました。
今回は、その試写の中から数枚をアップしてみました。
お借りしたのは、XCシリーズとしてラインナップされている
「12mm」「16mm」「25mm」「35mm」「50mm」のうち、
16mmの焦点距離のレンズ「LM16XC」です。
本来の4/3型の感覚なら「35mm判で32mm」となりますが、
今回はAPS-CセンサーのNEX-5での撮影なので「24mm相当」くらいの広角レンズ、
という事になります。
本来4/3型のイメージサークルで作られたレンズを、
果たしてAPS-CのNEXで使うとどうなるのか?使い物になるのか?、
を検証するのが、モニターの役割と捉えて試写を続けております。
今回は、その中からいくつかの写真を公開します。
1/800秒 F4.0 (ISO200)
JR根岸線 桜木町-関内間
2012年5月12日
1/1000秒 F2.0 (ISO200)
JR根岸線 横浜-桜木町間
2012年5月12日
1/1600秒 F4.0 (ISO200)
京浜急行電鉄 横浜-戸部間
2012年5月12日
1/125秒 F2.8 (ISO800)
JR山手線 秋葉原-御徒町間
2012年5月18日
1/250秒 F2.0 (ISO800)
御徒町「2k540」内
2012年5月18日
特記以外は全て、
SONY NEX-5
Kowa LM16XC (16mm F2.0)
ブログ用に縮小すると、
本来のこのレンズの「良さ、凄さ」が伝わりにくいのが残念なところです。
まず、ピントが凄いです。
そもそもが工業用で製品検査をするようなレンズなので、
焦点の合ったところの「合い方」が半端じゃありません。
それは逆に、ちょっとでもピントを外すと「全然合ってない」写真になる、
という怖さと表裏一体でもあります。
NEXの液晶では常に拡大表示で厳密にピントを合わせておりました。
また、全体に写りが軟調である事。
工業用、なんて言うと、恐ろしくガチガチでシャープ過ぎる程、
というイメージを抱きがちですが、むしろ真逆。
どことなく、オールドレンズで撮影しているような柔らかさがあります。
そして、コントラストがそれほど高く無い事。
割と全体的に落ち着いた雰囲気の色合いになりました。
「ポジと言うよりはネガ」、と申し上げるとイメージしやすいかもしれません。
お借りしたのは16mmという短焦点レンズですが、
開放がF2である事もあいまって、非常に深度の浅い写真が撮れます。
24mm(ないし24mm相当)のレンズはいろいろ持ってますが、
これだけ「背景をボカして立体的に」写せるというレンズは、
意外と無いと思いますし、しかもボケが非常に綺麗です。
第一印象としては、「これはまさにスペシャルなレンズだ」、という一言に尽きます。
もちろん、そもそもが「写真撮影用」として作られていないので、
操作性は、必ずしも「快適」とは言い難いものがあります。
なお、ご覧の通り、画像周辺には「減光」が見られます。
やはり、4/3のイメージサークルを謳うレンズなので、
APS-CセンサーのNEXだと、どうしてもケラれてしまいます。
しかし、下の2枚は、画像のアスペクト比を「16:9」に変更して撮影。
これだと、減光の傾向は見られず、全体にほぼ均一な画像になっているものと思われます。
Kowa XCシリーズをNEXで使う場合の「逃げ道」の1つになるだろう、と思われます。
※折良く、本日発売の『日本カメラ』誌の2012年7月号に、
「デジカメWatch」の記事でもお馴染み澤村徹氏の執筆により、
同XCシリーズ中の「LM50XC」を取り上げた記事が掲載されています。
恐らく、商業誌レベルで、工業用レンズを用いた作例が載ったのは初めてでは、
と澤村氏は申しています。
こちらも、是非手にとってご覧下さい。
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コメント
ちょっと高いけどね。10万円(汗)
でも、カメラ、レンズを何本も手放してこれ1本買うってのも、
決して無駄じゃない出来のレンズとは思うけどね。
まぁ、うちのレンズを全部束にしても10万にはならんけど(汗)
使い勝手とかクセもあるので、引き続きレポートするのでご参照を。
投稿: ごっさん | 2012年6月22日 (金) 12時45分
む、これはホタル撮りの最終必殺兵器にもなりそうな予感!
足りんのよ、「明るい広角側」が・・・APS判だと特にね。
投稿: gochi-zoh | 2012年6月21日 (木) 20時28分