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2013年4月 1日 (月)

2013年版・デジイチでフィルムをデュープ【(4)カラーネガから取り込む篇】

連載が飛び飛びになってしまい恐縮ですが、
写真フィルムをデジタルデータ化する方法として、
スキャナではなく、デジカメを使って「デュープ」(複写)する方法について、
何度か書いて参りました。

2013年版・デジイチでフィルムをデュープ【(1)準備と撮影篇】
2013年版・デジイチでフィルムをデュープ【(2)ポジから取り込む篇】
2013年版・デジイチでフィルムをデュープ【(3)白黒ネガから取り込む篇】

「デュープの撮り方」に始まり、
比較的平易な「ポジ(リバーサル)」「白黒ネガ」について書いてみましたが、
ここからは、いよいよ「カラーネガ」でのデュープの撮り方。

ただ、正直、この方法はまだ「暗中模索」の部分があるため、
ここに書く事が完全ではない事を、どうかご承知置き下さい。

カラーのネガをデュープする上で、どうしても避けて通れない問題は、
「ネガのオレンジベースを、どのように処理するか」、という点にあると思います。

オレンジベースは、「直接光を当てて印画紙に投影する」上では、
必要不可欠なものだそうですが(理由をあまり知らないので詳しく語れないのですが、
もしオレンジ色じゃないと、印画した時に色が濁るそうです)、
デジタルデータとして扱う上では「邪魔」でしかないものです。
これを、如何に「正確に消す」かによって、後々の結果が変わってきます。

試しに、オレンジベースのままデュープしたものを、
D7000の液晶で「RGB別ヒストグラム」表示すると、こうなります。

Dsc01572

赤・緑・青の成分の「山」が、大きくずれているのが分かります。
かなり赤い成分が強く、青い成分が弱くなっており、
非常にバランスが悪い事になっています。

オレンジベースを「消す」には、その「対抗色」である青色い光を使う事で、
赤い成分を相殺して打ち消す事が可能です。
上記リンクの「(1)準備と撮影篇」の中でも、
「ライトボックスの上に、青いセロファンを敷いて、光源を青くして」
デュープを撮っている写真を載せました。

本来は、ネガのオレンジベースを「完全に消す」色のフィルターを用いて、
完璧に相殺する方がベストである事は確かですが、
ネガのメーカーや銘柄によって「オレンジの濃さ」が違いますので、
なかなか完全に、とはいかないものです。

自分がデュープを撮るときに使っているのは、
実は、ダイソーで買ってきたカラーセロファンセットです。
ここに入っていた「青い色のセロファン」を、
2枚重ねてライトボックスの上に置き、青い光を使っています。
(ネガによっては、2枚重ねず、1枚だけの薄い青色にする事もあります。)

青いセロファンを通した光でデュープを撮ると、こうなりました。

Dsc01581

まだ少々「赤」が強いですが、先ほどのヒストグラムに比べれば、
赤・緑・青の成分の「山」が、かなり近い形で表示されています。
ここまで近づいていれば、後はPhotoshop上で何とかできるはずです。

*13/05/14追記:
ここでは「RGBの山が近い方が」と書きましたが、
その後いろいろ試しておりますところ、
むしろ「ちょっと青が強い」くらいの方が、
後々いい結果になるような?という印象を得ています。
デュープで青すぎる=反転すると赤が強い、という事ですが、
青が強いより、赤が強い方が、補正が綺麗に利くようです。
(追記ここまで)

では実際に、「ネガそのままデュープした画像」と、
「青い光を通してネガをデュープした画像」にて、
全く同じ処理をした場合の仕上がり具合を比べてみたいと思います。
以下3枚とも、左は「ネガそのまま」、右は「青い光」でデュープしたものです。

(1)フチをカットし、トリミングする
Color_nega_dupe_1

(2)「階調反転」する(Photoshop Elements10の場合は「Ctrl + I」)
Color_nega_dupe_2

(3)「自動カラー補正」を実行する
Color_nega_dupe_3

実際は、ここからコントラスト等を調整していくわけですが、
自動処理を用いた、全く同じ処理にて比較してみたいと思います。

左の画像を見ると、「階調反転」した時点で「非常に青い」事が分かります。
ネガ反転するわけなので、ネガが「オレンジ=赤っぽい」ものが、
反転して「青い」方の成分が表に出てきたわけです。

一方、青い光にてデュープした方は、階調反転した(2)の時点でも、
「そこそこ自然な」色合いをしていると思います。
もう一息で何とかなるぞ、と予感させてくれる画像です。

「カラー補正」をしても、そのままデュープした左の画像は、
やはり全体に青っぽい感じが残っています。
ここで無理に青を消そうとすると、赤や黄を大幅に足す事になり、
カラーバランスのおかしさを払拭しきる事が出来ません。

一方、右の青い光の方は、全体に「くすんだ」「地味な発色」ですが、
色合いは自然な感じに落ち着いているだろう、と思われます。

この「くすんだ」感じは、個人的には「ネガの特徴」だと思っており、
むしろ「そうそう、これがネガの画像」と思える画だろう、と思っています。

なお、ある程度デジタル画像に慣れた方なら、
「そのままネガを撮っても、RAWから展開する時にカラーバランス調整すれば?」
とお考えになると思います。
自分自身、当初は「それで出来るはずだ」と思っていました。

確かに、RAWからの展開の時点でカラーバランスを整えておけば、
ある程度「青みの強い画像」になる事を防ぐ事が出来ますが、
RGBそれぞれの色成分が均等にデータ化されていないためか、
「青い光」でデュープする時ほどの「自然さ」は得られないな、
という感触を得ています。

という事で、右側の画像を、更にレベル調整し、
少々トリミングした画像は、こちらになります。

121227_02_lse
Leica M2
Nikon Nikkor-P.C 10.5cm F2.5
1/1000 F4.0
Kodak ProFoto XL 100
小田急 祖師ヶ谷大蔵駅
2012年12月27日
※デュープ機材
Nikon D7000
Canon New FD50mm F3.5 Macro

話しはそれますが、Leica M2の「90mm」のブライトフレームで、
105mm(10.5cm)の画角を想像しながら撮影したものですが、
意外と枠内に収まるものだなぁ、と驚いております。
以前、Canon7に同じレンズ付けて撮った時は、
電車等の被写体が、ことごとく「フレームアウト」したものでした。
以上、蛇足。

Photoshopの「自動補正」は非常に優秀なので、
色合いもコントラストも、ほぼ思った通りに画になってくれます。
ただ、日向と陰が同居してるとか、屋内であるなど、
色バランスや露出が難しい画像だと、なかなか一発に、とはいかないので、
後から手動での補正をチクチク実行する必要が出てきます。
それが、なかなか面倒ではあります。

また、デュープを撮る機材ですが、
手元のSONY NEX-5と、Nikon D7000を比べた感じだと、
圧倒的にD7000の方が、色再現性が高いようでした。

オートホワイトバランスの精度の問題か?、とも思ったんですが、
マニュアルで指定して試してみても、NEXの方では、
階調反転後に「正しい色」になってくれませんでした。
特に、赤色が「飽和」する感じで、今回のLSEのように、
赤がポイントである被写体では大きな違いが出るように思われました。

・・・という事で、4回に渡って「フィルムからのデュープ」について、
我流のやり方をまとめてみました。

本来は、この4回だけで終わらせるつもりでしたが、
書き進めれば書き進める程、
あまりに「我流過ぎ」「機材が一般的じゃなさすぎ」
という問題を痛感してきました。

そこで、連載5回目として「誰でも持ってそうな手軽な機材」で、
なるべく「いいデュープ」が撮れる良い方法はないか、
考えた上で、より実践的に書いてみようかな、と思っています。
そこは、研究後になるので、少々先の執筆になると思います。

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コメント

たかぽん様

いやいや、プロなんかじゃないですよ。
20年以上、無駄にたくさん撮ってますが、
たいした写真は撮っていません。

ただ、フィルムで撮るのは好きだし、
でも、店頭のプリントは昔ほどの品質じゃないし、
そうなると、デジタルでいかに工夫するか、
その成果の一端を書いたまでの事です。

投稿: ごっさん | 2013年12月21日 (土) 22時48分

D600用に Micro-Nikkor 60mmの件
スライドコピーアダプターを店頭で着けてみたら、
画面ぴったりに写せることがわかりました。近いうちにNikkor Micro 60mmを買うつもりです。

なお、Ai Micro-Nikkor 55 mm と 105mm では、最短撮影距離の関係で
スライドコピーアダプターを使うことができません。(ピントが合わないのです)

フィルムの粒状感の件
> 細密画、と例えると言い過ぎかもですが、例えば「真っ青な空」を拡大した時も、
> 一つ一つの画素は違う色だったり大きさだったりする、
> それらの集合体が、フィルム(ネガ)らしい表現の源だと思っています。

夕焼けのような滑らかな階調の場合、ブロックノイズっぽいのが出るんですが、
こういうことだったんでしょうか。
Adobe LRでのノイズ除去を頑張っております。


ごっさんはプロの方なんですね。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: たかぽん | 2013年12月20日 (金) 18時17分

たかぽん様

レスが遅くなり失礼いたしました。

>ごっさんの機材の場合では、何万画素でしょうか?

この頃の環境だと、上下はほぼノートリミング(数画素程度の余白でギリギリ)だったので、
おおよそ「1600万画素中、1550万画素」といった感じでした。

>フィルムの粒状感はありますか?

あります。むしろ、それが無いと「デュープしてまでフィルムに拘る」理由はないかな、
と思っています。
細密画、と例えると言い過ぎかもですが、例えば「真っ青な空」を拡大した時も、
一つ一つの画素は違う色だったり大きさだったりする、
それらの集合体が、フィルム(ネガ)らしい表現の源だと思っています。
(ポジだと、また話しが変わってきますが。)

>D600用にNikkor Micro 60mmを買って、

こればかりは、試してみない事には何とも言いようがないですが、
一つ言える事は、「APS-Cで35mm判をデュープ」するのと違い、
「フルサイズで35mm判をデュープ」する、という事は、
より大きく拡大する(倍率で言えば、まさに等倍)事になるので、
それだけ、よりレンズの性能が重要視されるだろう、という事です。
その点がクリアされれば、D600は抜群の表現力を持つカメラなので、
より「フィルムらしさ」を、しっかり捉えてくれる事だろう、と想像されます。

>点光源が妙に赤くなることはあります。

デュープに限らず、デジタルでは「赤」を再現するのが非常に難しいようです。
先日も、仕事でビデオカメラを回してて気づいたんですが、
通常利用だと、業務機も民生機も大きく再現性は変わらないんですが、
真っ赤な服を着た人を撮ると、民生機は赤が「きつく」なり、飽和ぎみになりました。
業務機だと、しっかり色合いが再現されてました。
このエントリーでは「ソニーのせい」みたいに書きましたが、
ようするに、機種による再現性の違いがあるんだろうな、と思われました。

投稿: ごっさん | 2013年12月17日 (火) 00時44分

お返事ありがとうございます。

オレンジベースの理由はここに書かれてました。中々難しいです。
http://www.phoenix-c.or.jp/~e-ichi/qa/qa1.html

デュープ法を確立できたのも、ごっさんのこのページでオレンジベースの除去の大切さ、ヒストグラムの見方がわかったからです。
(デジカメでデュープする人のページは少ないようで、ここまで体系だてて公開してくれる方は他にいらっしゃらないようです。)
大変、ためになりました。ありがとうございます。

いくつか共有&質問させて下さい。


<デュープした画像の画素数>

デュープした画像の端っこトリミングした結果、画素数は1000万画素弱となります。
(Nikonスライドコピーアダプター ES-1の長さのため、画面目いっぱいにフィルムを写せないためです)
また、ISO100でもフィルムの粒状感を感じます(夜景を撮ることが多いので粒状感が気になりやすいのかもしれません。)

ごっさんの機材の場合では、何万画素でしょうか?フィルムの粒状感はありますか?

D600用にNikkor Micro 60mmを買って、こっちでデュープする方が画質の向上は見込めそうでしょうか?
(現在の機材で、フィルムの粒状感を感じるので、これ以上やっても無駄な感じがしますが。)

(また、中古引き延ばしレンズとマウントアダプター・ヘリコイドよりは、Nikkor Micro 60mmの方が画質が良いと思いますが。)

<気付いたこと>
オレンジベースを除去してもフィルムによって色合い・色味(色相?)が結構異なるようです。

>手元のSONY NEX-5と、Nikon D7000を比べた感じだと、圧倒的にD7000の方が、色再現性が高いようでした。
>NEXの方では、階調反転後に「正しい色」になってくれませんでした。特に、赤色が「飽和」する感じ
とありますが、

当方のNEX-5Rで夜景のフィルムをデュープすると、点光源が妙に赤くなることはあります。
(同時にD600でも撮影しており、その画像と比較してます。)

<Lightroom>
Adobe Lightroom だと、raw画像ならば、元の画像を上書き保存することは無い(画像編集のパラメーターを同名のxmpファイルに保存する)のでガンガン修正できます。
色相・輝度の色別の設定が可能なので、ベルビア仕上げも可能かもしれません。(まだ、やってないです)

<その他>
エクステンションチューブを使って、デュープした場合、本物のマクロレンズではないので、どうしてもピントが甘かったです。
(樽型歪みも発生、これはAdobe LR で補正できるので構いませんが)

ネガフィルムのlatitude が広いと言っても、やはり露出ぴったり合わせたい。が、難しいですね。

投稿: たかぽん | 2013年12月10日 (火) 11時28分

たかぽん様

コメントありがとうございました。
レス遅くなり、失礼しました。

フィルム初めてまだ1ヶ月で、既にデュープ法を確立されたとの事、
そのこだわりは素晴らしものと感服いたします。

5Rに純正マクロなら、素晴らしい結果が得られそうですね。
この記事を書いた頃はまだLightroomを持ち合わせてませんでしたが、
先日キャンペーン特価の時に購入(契約)したので、
またいずれ、そちらの方法も試してみたいと思います。

(とはいえ、最近めっきりフィルムで撮らなくなってきておりますが…。)

ネガが、ややくすんだ(地味な)色になるのは特性だと思います。
そこを気に入らない人は、ポジで撮るのが一般的でした。
以前は、ポジもいろいろ種類がありましたので、
高彩度のものを好んで「真っ青」「真緑」あるいは「真っ赤」な写真を、
たくさん撮ってらっしゃった方も多いと思います。

ラチチュードの広さは、デジタルを経験してから振り返ると
「あり得ない」くらいのレベルだったと感じます。
特に「露出オーバー」に強いのがネガだと思います。
「露出に迷ったら、ややオーバー目に撮る」と、
まず失敗する事はないです。
後は、焼き(ないしスキャン、デュープ)で何とかなるのが、
ネガフィルムの特徴の一つだと思います。

投稿: ごっさん | 2013年12月 7日 (土) 22時17分

初めまして、フィルムカメラを初めて1か月、ネガフィルムのデータとしての保管&
スキャンと色補正の方法を求めて、彷徨っていたら貴殿のこのブログにたどり着き、
やっと、自分なりの方法を確立できた(ように思います。)
こんな感じです。

<機材>
Sony NEX-5R , マクロレンズ(SEL30M35)、ステップアップリング、
Nikonスライドコピーアダプター ES-1、自作フィルムホルダー(硬質ファイルケースを加工)
安物のLEDトレース台

<撮影設定>
ISO100
F10
1秒
色温度は 2600k G7

<工程>
LR でインポートして、ポジネガ変換後、スポイトツールを使ってホワイトバランスを調整
(フィルムの端っこのオレンジベースを基点にする)

ヒストグラムで3色の範囲が大体同じになるようにトーンカーブを調整する。
(緑と青の右端を落とすだけ、修正する時間を考え直線のままにする)

ややくすんだ色味になるのはネガフィルムの特徴なんでしょうか。

<結果>
1枚にかける加工時間が大幅に短縮できました。
ネガフィルムって、露出のlatitudeがほんとに広いんですね。

投稿: たかぽん | 2013年12月 5日 (木) 01時42分

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