旧信越本線「めがね橋」の橋上から幻影を見る
家族旅行で軽井沢、草津温泉方面に向かう道すがら、
かつて信越本線が66.7パーミルの勾配を登った碓氷峠、
その旧線の痕跡である通称「めがね橋」に足を運びました。
当初は「下から見上げる事が出来れば」というつもりでしたが、
調べてみると、最近は遊歩道として整備されている、という事なので、
熊ノ平駅(跡)近くの駐車場に車を停めて、
少しばかりの散策を楽しみました。
※写真は全て、
Panasonic Lumix DMC-GX7
Lumix G Vario HD 14-140mm F4.0-5.8 ASPH. H-VSO14140
「熊ノ平駐車場」道向かいの階段を登ると、
そこに、旧熊ノ平駅(信号所)の跡が残っています。
来てみて驚いたのは、
1997年の北陸新幹線開通・信越本線横川-軽井沢間の廃止から22年、
まだ線路や架線など、ほぼ当時のまま残っていた事です。
「まるで、今にも列車が走ってきそうな」とはありふれた例えですが、
そんな言葉が自然と脳裏をよぎらざるをえない光景が目の前に広がり、
一瞬にして「異空間」の中に連れ込まれたような不思議な感覚を覚えました。
左に2つ見えるトンネルは、1963年に開通した新線。
右に見える少し小さいトンネルが、
アプト式の旧線。遊歩道はこちらに整備されています。
(更に右、木に隠れているところに、
入れ替え用のトンネルもあります。
貫通しておらず、あくまで入れ替え用。)
レンガで装飾された明治時代のトンネル。
立派な作りですが、歩いてみると、
時々上から「ポタッ、ポタッ」と水しずくが。
そのため、足下はぬかるみ、
うっかりすると滑ってこけてしまいそうな有様でした。
「あれ?出口じゃ無いのに光が差してる」と思ったら、
天井や壁面に穴が開いている所が何箇所か。
てっきり崩れたのかと思いましたが、
しっかり装飾された穴なので、
排気のために開けられたものだろうな、と推察。
一本垂れ下がる草の茎が、
どことなくラピュタ感を醸し出しています。
柔らかな光差し込む開口部から、
緑美しい山並みを眺めるのも、おつなものです。
ところどころにある、退避用?のくぼみ。
明治時代、手彫りで掘ったトンネルなんだな、
という事が分かる、荒削りな岩盤が印象的です。
そんな調子でいくつかのトンネルを抜けると、
いよいよ、一番の名物「めがね橋」です。
写真では何度も見てた有名な橋ですが、
実際この目で見ると、その迫力は想像を絶するもので、
碓氷峠の名所としてたくさんの人が訪れるのも当然だな、
と納得のスケール感でした。
土から作ったレンガを用いた橋ですから、
緑に囲まれても不思議と違和感を感じず、風景に溶け込んでいます。
さて、この「めがね橋」の真ん中から、
山の方を見てみると、そこには、
コンクリートで出来た真新しい橋を臨む事が出来ます。
「熊ノ平駅」からトンネルに入った信越本線の新線は、
アプト式の旧線から離れて、あんな遠くを走っているわけです。
ズームレンズを押したり引いたり、
またカメラを縦にしたり横にしたりして、構図を決めます。
空を大きく入れるか、でも今日は曇っているから、
手前の緑をメインに距離感を出して見ようか。
と、あれこれ悩んだ末に、
よし、構図はこれで決まり!
後は、ロクサンを補機につけた189系「あさま」が来るのを待つばかり…
と、ついつい「鉄」な行動をひとしきりし終えてから
「あ、そうだった!」
ついさっきも書いたばかりです。
あの新線は、22年前、1997年に廃線になっています。
待てど暮らせど、189系が峠を下っていく事はありません。
それでも、ついこの場に陣地を構えて、
その時が来るまでジッと待っていたい、
思わず「撮り鉄」の衝動に駆られる瞬間でした。
実は、このブログを書きながらいろいろ調べてましたら、
この新線、線路も架線もほぼそのままなのは、
再び電車を走らせよう、という構想があるからだそう。
だとしたら、この「めがね橋」からの構図で、
あの走る列車を撮れる日が来る事も、
あながち夢、幻とは言えないのかもしれません。
実は頓挫しているらしい、という計画に思いを馳せつつ、
目的の「めがね橋」より、あのコンクリートの橋が忘れられない体験だった、
旧信越線散策の短い探訪を終えました。
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