Fujifilm X-T10の初陣を、二子新地で
きっかけは「APS-Cのセンサーで、無音電子シャッター切れるカメラはあるのかな」と思った事です。
一番そういうのを出してそうなソニーは、ここ最近の機種から対応し始めたところで、相場はまだまだ高い。
一方で、まぁ富士のカメラは対応してなさそうだなぁ、というイメージとは裏腹に、割と初期から対応機種がいくつか。
そこで相場を調べてみると、4K動画に非対応の世代が、もう中古価格だいぶ安くなっているのに気づきました。
まだ4年前(2015年)に発売されたばかりの「X-T10」も、今や中古相場が2万円台。これなら試せる、と思って購入してみました。
デジカメ黎明期の頃から、「CCDハニカム」をはじめ「どこにでもありそうなベイヤー配列のセンサー」
とは一線を画した、独自の撮像センサーを追求する富士フイルム。
銀塩フィルムの構造をヒントに作り出した「X-trans CMOS」の写りも、
一度はこの手で試してみたい、と思っておりました。
登場以来7年目にして初めての実戦配備です。
(と、電子シャッター云々の事はすっかり蚊帳の外に。)
試写は、久しぶりに東急田園都市線の二子新地駅ホームより。
2011年以来、8年半振りの訪問です。
先日、本屋で見掛けた『鉄道ダイヤ情報』誌、
表紙に「8500系ラスト」の見出し。
これはまずい!、と思って急いでやってきましたが、
引退は2022年度、との事。
むしろ、慌てないといけないのは「踊り子」の185系の方でした。
ちなみに、久しぶりに二子新地駅を訪れてみたところ、
ホームドアの設置工事が完了しておりました。
前回以来しばらく遠ざかっていた理由の一つは、
安全な場所で撮影しているはずなのに警笛音を何度も鳴らされた事。
いかにも「マナー違反の撮り鉄」扱いされているようでストレスを感じ、
近場にも関わらず足が遠のいておりました。
しかし、この日はホームドアのおかげで一度も鳴らされず。
今後、撮影に来る機会が増えそうです。
(だからと言って、ドアの壁に近接するような立ち位置での撮影は危険なので、
ゼッタイやってはいけません。)
前置きが長くなりました。以下、実写を紹介します。
なお、レンズは、これもこの時以来久しぶりに登場のSoligor。
恐らくはミランダ時代の非常に作りの良い、そして写りの良いレンズです。
非AiレンズなのでNikon D300では使えないレンズでしたが、ミラーレスならアダプタ装着なので無問題です。
今回、絞りは全編「開放」で撮影しております。
X-T10が届き、手にした時に一番驚いたのは、その小ささと軽さでした。
店頭で手にしたことがなかったので気づいてませんでしたが、
見た目がクラシカルな一眼レフ然としているので、
なんとなくPENTAX SPやCanon FTbなどを手にするような、
重量感のあるずっしりとした感覚を連想しておりました。
むしろ、サイズ感、重さともパナソニックの「DMC-GX7」に近い。
EVFの張り出しがなければ、ほぼ同じ大きさでした。
フィールドワーカーとして「小さくて軽くて写りが良い」事を求める者としては、
この手軽さは120点。「これなら戦える」という気分になります。
撮影をはじめると早速、昨年デビューの新鋭「2020系」がやってきました。
FUJIFILM X-T10
Soligor Tele Auto 200mm F3.5
1/800秒 F3.5 (ISO200)
東急田園都市線 二子新地駅
2019年11月9日
黒い顔に緑のライン、東急らしからぬ?顔立ちの電車ですね。
そして、顔が斜めになってるのでいろいろ映り込みそう。
撮影しにくいヤツです(笑)
最初のうちは、やれEVFの明るさは、とか、ファンクションボタンのカスタムは、
などいろいろ考えながら撮影しておりました。
撮影を始めてすぐに気づいた事は、
再生ボタンが背面向かって左上にある事でした。
いつも、撮影した直後に、右手親指で再生ボタンを押し、
すぐにチェックするクセがついていたので、
つい「Q」ボタンか何かを押してしまい「あ、違う」と気づき、
改めて再生ボタンを押す、という事を何度かやってしまいました。
この位置だと、カメラをグリップしたままでは押せず、
一度手を離さないといけませんし、
EVFの前を手が横切る度に液晶が消えたり点いたりするのは、
ストレスとまではいいませんが、どうにも慣れません。
だったら、撮影後のプレビュー画像を連続点灯にしておけば、
という意見もありそうですが、
どうも、SDカードのアクセスランプが消えるまで待ってからプレビューする、
というクセもあるので、できれば「わざわざ再生ボタン」を押してチェックしたいのです。
まぁ、どうでも良いことです(笑)
FUJIFILM X-T10
Soligor Tele Auto 200mm F3.5
1/2500秒 F3.5 (ISO200)
東急田園都市線 二子新地駅
2019年11月9日
少々ハイライトが飛んでおりますが、
(一応RAWの同時記録もしておりましたが、)
直してしまうと試写にならないので、あえてそのままです。
多分、Photoshopでチョイチョイするだけでも直るだろうな、と思いましたが。
これも既に懐かしい系の車両になりつつある9000系。
将来引退が近づいた折には、是非オリジナルの塗色に戻してラストランを、
と願っております。
マニュアルレンズでピントを合わせる時、役に立つのが「フォーカスピーキング」。
これまで、ソニーやパナソニックのカメラでも使ってきた機能ですが、
個人的な感覚だと、一番分かりやすい、合わせやすい表示のされ方だな、と思いました。
いつもなら、中心部を拡大して合焦するところを決めていますが、
今回はほぼピーキング任せで問題ありませんでした。
ところが一つ問題があって、ピーキング表示のチラチラのせいで
露出(明るさ)が全然分からなくなるのです。
シャッター半押しでピーキングは解除されますが、
離せば当然またピーキング表示に戻る。
「ダイヤルをクリクリ回しながら露出を合わせたい」と思っても、
ピーキングが気になって合わせられないのが、結構ストレスでした。
なので、ファンクションでMFアシストON/OFFの設定を…、
と思いましたが、その機能は盛り込めないようでした。
ファンクションキーに割り当てたい機能が盛り込まれていない、
という話しは、富士のミラーレスでは時々聞く話しですが、こちらも同様でした。
FUJIFILM X-T10
Soligor Tele Auto 200mm F3.5
1/2500秒 F3.5 (ISO200)
東急田園都市線 二子新地駅
2019年11月9日
富士フイルムのミラーレスの特徴の一つは、
色見の設定項目で「フィルム」の銘柄を指定するところにあると思います。
通常は「Provia」で、彩度高めにする場合は「Velvia」で、といった感じ。
他社なら、恐らく「スタンダード」「ヴィヴィッド」といった表現になるところです。
なお、この東武50000形の写真は「Astia」に設定して撮影したもの。
(最初の2020系は「Provia」、9000系は「Velvia」、後は全て「Astia」です。)
※フィルムシミュレーションの略号、「Astia」はなぜか「S」なので、
「Sensia」なのか、と勘違いしそうでした。
「Sensia III」は好きなフィルムだったので、対応してくれてたら嬉しかったのに。
購入前は、このフィルム銘柄指定による色調指定方式には「姑息な」印象を持ってました。
デジタルとフィルムは全然別物なのに、フィルムの感覚を持ち込むなんて、と。
それは、このカメラの見た目そのものにも感じた事でした。
なんで一眼レフじゃないのに一眼レフみたいなスタイルにするの?と。
ここに、ここ最近の富士のミラーレスを斜に見て敬遠していた理由がありました。
ところが、です。このフィルムシミュレーション、実際使ってみると、
本当に「あぁ、Proviaっぽい」「確かにVelviaだ」という画が得られるのです。
単に「彩度高い」に「Velvia」という名前を当てはめただけではなく、
実に忠実に「あの色」が出るように突き詰めたんだな、と。
名ばかりじゃない事に気づき、食わず嫌いを反省しました。
※本物のVelviaで撮影した、懐かしの中央線201系の撮影が懐かしいです。
ちなみに、この2020系はノーマルの「Provia」で撮影し、
その後から「Velvia」に切り替えて試写を続けるのですが、
ちょうどそのタイミングから雲が切れてピーカンとなってしまいました。
曇天と晴天では、色の違いが全く分かりません(笑)
更に言えば、1枚の撮影画像から3枚の色見を同時保存できる
「ブラケティング」機能の存在も、今書きながら初めて気づきました。失態!
今回は試したフィルムシミュレーションは「Provia」「Velvia」「Astia」
の3種類。他にも、ネガやクラシッククローム(コ●クローム?)などもあり、
それらの写り方も試して、色見の感覚を理解しておきたいと思います。
※個人的には、これだけ忠実に色見を再現できるなら、
生産中止となったピールアパート式のインスタントフィルム、
「FP-100C」や「FP-3000B」などの写りも再現して欲しいな、
と思いました。「アドバンストフィルター」でトイカメラを指定、
という方法もありますが、あくまで「それっぽい」ではなく、
まさにあの画をデジタルで忠実に再現して欲しいし、
それは充分に可能な事だろう、と思いまして。
富士の方、見てたらご検討ください(笑)
FUJIFILM X-T10
Soligor Tele Auto 200mm F3.5
1/2000秒 F3.5 (ISO200)
東急田園都市線 二子新地駅
2019年11月9日
今回の目的、8500系です。
「引退」という言葉が脳裏にあったので、なかなか撮れないのでは、
と思いましたが、まだ案外バンバン走ってくるので、
しばらくは安定した撮影ができそうです。
ひとまず、露出も構図も色見も「今日はこれ」というところが決まってから撮ったので、
いい感じに収まった一枚となりました。
日頃、鉄道撮影の際は連射をOFFにし、「一撃必中!」を狙うのですが、
今回は連写最高速にして撮影。
X-T10は秒間約8コマだそうですが、まぁ速い速い。
一瞬レリーズに触れただけでも3コマくらいは写ってしまいます。
シャッター幕のフィーリングも柔らかく、
「シャシャシャシャシャ」と軽いステップでコマを進めてくれるので、
気持ちよく撮影する事ができました。
(逆に単写だと「がっしゃん」という感じで、
凄い低速シャッターを切ってるような音に聞こえてしまい、
ブレたんじゃないか?と不安に感じるほどですが。)
FUJIFILM X-T10
Soligor Tele Auto 200mm F3.5
1/2500秒 F3.5 (ISO200)
東急田園都市線 二子新地駅
2019年11月9日
そんなこんなでX-T10の初陣、「気に入らなかったらさっさと売り抜けようか」
とも思ってましたが、とんでもない話しです。
上記の通り、細かいところで気になるところもありましたが、
総じて使い勝手よく、写りも良く、取り回しも良い。
いい事づくめなカメラでした。
思えば、これまで使ってきた富士フイルムのデジカメは、
「写りは良いけど、操作性がいまいち」というのが多かった気がします。
人づてにも、Xシリーズ第1号機の「X-Pro1」は、なんだか使いにくい、
という話も聞いてましたので、富士は相変わらずだなぁ、と思ってました。
ユーザフレンドリーじゃないのが富士のアイデンティティなのかな?、と。
そんな印象を7年間引きずってましたが、いざX-T10を手にすると、
写りはもちろん、操作性も、レスポンスも良い。
エレキに強いのは電機メーカーだから、
古参のカメラメーカーのデジカメはどこかイマイチ、
という事が多かったですが、このカメラにそのような印象は全くありません。
十分に合格点、どころか、これをメインカメラにしてもよいのでは、
と思うほどの実力機でした。これが中古で2万円台とは驚くべきことです。
世間は「フルサイズ信仰」が幅を利かせ、
「ソニーvsキヤノン、ニコン」の構図ばかりが注目されて、
地道によいカメラを作り続けている富士フイルムが少々日陰になっていますが
(あ、あと、ペンタックスもお忘れ無く)、
本当に写真が好きな人なら「そう、これこれ!」と思えるカメラを作ってると思います。
ペンタックス党としては複雑な心境ではありますが(笑)、
新鋭X-T10、これからバリバリと活躍してもらう事にします。
最近のコメント