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2020年12月

2020年12月 5日 (土)

阿佐海岸鉄道、開通のあの日

11月末で阿佐海岸鉄道の「鉄道車両」での運用が終了し、
来春の「DMV」運行開始に向けての準備がはじまった、と聞きました。

「最後の日」と聞いた時、ふと、
「最初の日」の事を思い出しました。

1992年3月26日、阿佐海岸鉄道阿佐東線開通の日、
牟岐線に揺られて撮影に行った日のことです。

国鉄時代末期、工事中だった「阿佐線」は工事が中断され、
ほぼ路盤が出来ていた海部-甲浦間を含めて建設が断念されました。
その時の事は、国鉄→JR移行の際、
各種テレビ番組で放送されていた「さよなら国鉄」特番で、
ずさんな経営の赤字国鉄の象徴的な扱いで紹介されていたのでよく覚えています。

とはいえ、せっかく路盤が出来てるのに勿体ないなぁ、
と思っていたら、第三セクターとして工事が再開され、
そしてこの日、ついに開通の日を迎えたわけです。

※阿佐海岸鉄道に導入された2両の新車の「お披露目会」の写真は、
10年近く前のこのブログで紹介しております。

【懐古】阿佐海岸鉄道、新車お披露目会

徳島県内で新路線が開通するなんてこれが最後だろう、
と思いましたので、丁度春休みだった事もあり、
牟岐線に乗って撮影に向かったわけですが、
当時はまだインターネットなんてない時代ですから、
事前に撮影ポイントをGoogleマップでロケハン、
なんて出来るわけがありません
(それを考えると、今はいい時代になったものです)。

しかし、開通を前に、試運転の様子を撮影した写真が徳島新聞に掲載され、
それがとてもよい写真だったので「よし、ここで撮ろう」と決めました。
(と記憶してるんですが、正直うろ覚えです)

海部駅まで、相棒のキハ58-301に揺られ
キハ58-301の思い出も、過去のエントリーで書きました)、
開通式典後の華やかな雰囲気の中、阿佐線に初乗車して南下。
移動中も、外を注視して目的の撮影ポイントを探します。
「あ、あそこから撮ったんだな」と目星をつけたので、
早速お隣の宍喰駅で下車(なので、宍喰-甲浦は、実は未乗車)。
海部方面への道をてくてく逆戻りし、
少し小高い山肌から海を見下ろすポイントに辿り着きました。

そこで撮ったのが、この写真。

920326_18_20220411003601
Canon EOS630QD
EF35-70mm F3.5-4.5
1/125秒 F9.5
Fuji superHG400
阿佐海岸鉄道 海部-宍喰間
1992年3月26日
※デュープ機材
FUJIFILM X-S10
Canon New FD50mm F3.5 Macro

そう、開通の日は「曇り時々雨」な天気でした。
晴れてたら、実に気持ちの良い爽快な写真になった事でしょう。

ASA-101とASA-201が手を組んで走ることって、
あまりなかったんじゃないでしょうか?
なお、ASA-201は脱線事故のため既に廃車になっています。

我ながら「いい写真が撮れた」と満足な1枚でしたが、
実は後日談があります。

当時購読していた『鉄道ダイヤ情報』誌に、
写真家の広田尚敬さんが全国の第三セクターを撮って回る連載を持っていました。
そして、確か連載の最終回だったかな?と思うんですが、
阿佐海岸鉄道が取り上げられる事が次号予告にて告知されました。

そもそも、徳島の鉄道を撮った写真は、
『鉄道ダイヤ情報』や『鉄道ファン』といった雑誌に載る事はほぼ皆無でした。
自分がいつも撮っている徳島の鉄道風景を、
第三者がどういう風に撮るのか、比べる術がなかったんです
(なにせインターネットなんて以下略)。
なので、大尊敬する広田さんが、自分も撮影に行った阿佐海岸鉄道で、
果たしてどんな写真を撮ったんだろう?ととても興味をもちました。

そして、阿佐海岸鉄道が掲載された『鉄道ダイヤ情報』が発売されたので購入。
早速ページを開き、広田さんが撮った写真をみて愕然としました。
いや、オーバーでも何でも無く、本当に愕然としたんです。

撮影した場所は、恐らく上記写真とほぼ同じだろうと思われました。
しかし、広田さんは、ここから「望遠で」撮影されていたんです。
確か、車両が一両収まらないくらい望遠で、思いっきり寄って、
背後に海が大きく見える、圧縮率の高い写真だったと記憶しています。

あの景色を前にすれば、当然広角レンズで広く撮るだろう、と思いました。
せっかくいい景色が広がっているんだから、
全てをくまなく撮りたくなるものでしょう。
しかし、広田さんはそんな常識を軽く飛び越えていきました。
「これがプロの眼というものか。」
まだ鉄道撮影を始めたばかりの中学2年生には、
あまりに大きすぎる衝撃でした。

それからです。車両がフレームアウトするほど顔をアップで撮ったり、
あえて斜めにカメラを構えたり、と様々工夫をするようになったのは。
そしてそれらを『鉄道ダイヤ情報』誌の「添削教室」コーナーに送り、
それが何度か掲載される名誉にも預かりました。

今でも「中学生の時が、一番鉄道撮影に熱中していた」
という実感がありますが、そのきっかけの一つとなったのが、
この阿佐海岸鉄道開通初日の撮影だったわけです。

「阿佐海岸鉄道、鉄道車両運行終了」のニュースを読んで、
昔を振り返った時、ずっと忘れていたこんな事を思い出して懐かしくなりました。
もう、30年近く前の話しになりました。

920326_35_20220411003601
Canon EOS630QD
EF35-70mm F3.5-4.5
1/125秒 F6.7
Fuji superHG400
JR牟岐線/阿佐海岸鉄道 海部駅
1992年3月26日
※デュープ機材
FUJIFILM X-S10
Canon New FD50mm F3.5 Macro

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