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2022年4月12日 (火)

Motorola edge 20のカメラを分析

※2021年12月からメインスマホとして使っていた「Motorola edge 20」ですが、
その後ドコモオンラインで「Xperia 1 II」を安く入手できたため、
数ヶ月でその座を譲り、ヤフオクで売却して旅立っていきました。

しかし、カメラ機能がなかなか良くて、
レビューしようと思って書きかけていたエントリーがありました。
もう手放してしまいましたが、書き上げて公開する事にしました。
これからedge 20を使う方のご参考になりますれば。

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3年ほど使用したスマホ「Xperia XZ1 Compact(SO-02K)」を快適に使用してましたが、
内蔵メモリが32GBではアプリの追加もままならず、
これでは「ピクミン ブルーム」をプレイできないぞと思い(それが理由?)、
機種変更をと思いましたが、ドコモの端末は「高くて良い物」か「安くてそこそこ」なものばかり。
SIMフリーまで幅を広げて考えているうちに、
「1億800万画素」などとワケの分からんセンサーを搭載した
Motorola edge 20」というスマホが発売されたので、
思い切ってそちらを購入してみました。

1億800万画素なんてただのネタにしかならないだろう、と思ってましたが、
1ヶ月程使用し、これは「意外と?名センサー」だと思える程になったので、
今回は「edge 20」のカメラ周りをレビューしてみたいと思います。

■まずは「3眼カメラ」の仕様をおさらい

超高画素センサーの話しを始める前に、
3つのカメラ・レンズを搭載したedge 20のカメラについて、
諸元をまとめておきます。
(公式の仕様の他、海外サイト等で見つけた情報も盛り込んだものですので、
誤りがある可能性もあります。)

(1)メインカメラ(広角レンズ搭載)
センサー:Samsung ISOCELL HM2(1/1.52インチ、1億800万画素)
レンズ:5.9mm(24mm相当)、F1.9

(2)サブカメラ1(超広角レンズ)
センサー:OmniVision OV16A10(1/3.06インチ、1600万画素)
レンズ:2.2mm(17mm相当)、F2.2

(3)サブカメラ2(望遠レンズ)
センサー:OmniVision OV08A10(1/4.4インチ、800万画素)
レンズ:7.4mm(78mm相当)、F2.4、3x光学ズーム(?)

※望遠レンズの「?」についての詳細は下の方にて。

edge 20を買った理由の1つは、
3番目のカメラが望遠レンズ搭載だった事です。
多くのスマホでは、3番目のレンズは「深度センサー」
として利用される事が多い気がします。
個人的に、スマホでももっと寄って撮りたい、と思う機会多く、
どうせなら望遠で撮れるレンズを搭載して欲しかったのです。

同じ場所で上記3つのカメラを切り替えて撮ると、こうなります。

Edge20_1
(左から「メインカメラ」「サブカメラ1」「サブカメラ2」)

広角と超広角の画角変化があまり大きくないので、
メインは28~35mm相当くらいで良かったのでは、
という気もしますが、
それでも超広角の17mm相当はかなり広く撮れますし、
望遠も約80mm相当の中望遠なので、
「寄りで撮りたい」という希望はほぼ適えられています。
光学スペックはほぼ満足しております。

■撮影解像度は1200万画素?

カメラのアプリを立ち上げると、
画面下部に「動画」「写真」「≡」の3つの選択肢が並んでいます。
普通なら「写真」モードで写真を撮ると思うでしょうが、
これだと、どのカメラで撮影しても、
解像度は「1200万画素(12MP)」ないし「800万画素(8MP)」、
選択した方のいずれかで保存されます。
超広角カメラの1600万画素の写真も12MPか8MP、
望遠カメラの800万画素も同様(つまり12MPを選択した場合は拡大される)。
こういう挙動は、カメラを趣味とする人間には気持ちが悪いのです。
ちゃんとそれぞれのセンサーの解像度で撮影するには、
「≡」を押した上で「プロ」モードを選択する必要あります。

さて、「プロ」モードに選択した場合も、
メインカメラの保存解像度は「12MP」または「8MP」の2択です。
あれ、1億800万画素はどうしたの?と思いましたら、
「≡」を押した時の選択肢として「Ultra-Res」というのがあります。
これを選ぶ事で、初めて「億」の世界を堪能できます。
これは一体どういう事でしょうか?

ここで、ちょっとした算数のお時間です。
「12MP」で撮影した場合、写真の解像度は「4000x3000 px」です。
一方、「Ultra-Res」で1億800万画素をフルに生かして撮影すると
「12000x9000 px」となります。
この数字を見比べた時、あぁなるほど、と合点がいきました。
長辺・短辺とも、ちょうど3分の1の解像度で保存されるわけです。
一辺の解像度が1/3という事は、面積で言えば1/9。
108,000,000 / 9 = 12,000,000。簡単な割り算です。

それをふまえ、サムソンのWEBサイトに掲載されている、
ISOCELL HM2」のWEBサイトを見てみますと、
確かに、ナイトモードとして「9つのセルを1つのセルに統合する」事が可能、とあります。
これを「Nona-Pixcel」と呼んでいるようです。
edge 20は、本来暗所撮影用として搭載しているNona-Pixcelの技術を、
通常の撮影モードでも常時ONにして撮影・保存する仕掛けになっているようです。

これは、人によっては「1億800万画素って書いてあるのに、1200万画素で保存されるなんて、
どういう事だ!詐欺だ!」とお怒りになるかもしれません。
確かに、モトローラ社のWEBサイトには「1億800万画素」は強調されているものの、
保存されるのは1200万画素とは一言も書いてありませんので、
これでは誤解を招いてしまう可能性を否定できません。

でも、この仕掛け自体は非常に正しく、理にかなっていると思います。

カメラのセンサーについて少しでも知識を得ている方なら、
「解像度が高くて小さいセンサーは、
画素ピッチが小さくなり、ノイズが出やすくなる」
という事をご存じの事かと思います。
(それを転じて「フルサイズセンサー信仰」がはびこってますが、
それはそれで単純思考でしかないように思いますが、それはまた別の話)

1/1.52インチ(≒2/3インチ)の小さいセンサーで億の画素となれば、
極小も極小の画素ピッチと言えますから、
いくらテクノロジーは進化しているとはいえ、
当然ノイジーな画像になるはず、と想像できるでしょう。

実際、「Ultra-Res」モードで撮影した億の画像を観ると、
細かいテクスチャーが潰れている事を確認できます。
以下の写真は、同じメインカメラで撮影した画像で、
同じ箇所を等解像度に切り出したものです。

Edge20_2
(左が1億800万画素、右が1200万画素の画像から切り出し)

そもそも画素数が違うので、
等倍で切り出した時の画角が変わってくるのは致し方ありません。
左の1億800画素からの切り出しだと、
斜面に生えている枯れ草のディティールは完全に潰れています。
デジカメ黎明期の頃は、こういう描写のカメラが珍しくなくて、
よく「油絵のよう」などと称したものですが、それを思い起こさせます。
一方、「9画素をまとめて1つの画素として撮影」された1200万画素の写真だと、
引いた画である事を差し引いても、より解像感のある画像になっています。

今度は試しに、「1億800万画素の画像を、Photoshopで1200万画素に縮小」
した画像からの等倍切り出しと、最初から1200万画素で撮った画像とを並べてみましょう。

Edge20_3
(左が1億800万画素→1200万画素に縮小してから切り出し、右は1200万画素で撮影した画像から切り出し)

明るい部分の草は縮小した画像の方が線が細いですが、
影の部分はそもそもが潰れていたので、縮小画像でもやや細部があいまいな印象受けます。
対して1200万画素で撮影した画像は暗部までしっかり解像感があり、
本来夜間モードである事も納得できる写りです。

「極小画素=暗部に弱い」の常識を、
あえて極限まで極小まで小さくした上、
9画素をひとまとめにして1画素としてまとめてしまう、
これを私は「バロム・1方式」と呼ぶことにします(笑)

■9画素で1画素=ベイヤー配列の常識も覆す?

これはあくまで憶測と想像の話しで、
実際には違うかもしれませんので念のため。

デジカメのセンサーは、一部の特殊な仕様のものを除き、
「ベイヤー配列」という仕組みで成り立っています。
画素の一つ一つはRGB(赤緑青)のいずれかの色しか認識せず、
認識しない色の情報は「隣のセンサーが拾った情報」を元に推察してはじき出す、
というのが実におおまかな仕組みです。

しかし、このサムソンの1億800万画素センサーは、
9画素を1つの画素として認識する「バロム・1方式」です(しつこい)。
という事は、その9画素の中にRGBそれぞれの信号を受ける事ができれば、
実質的に1つの画素でRGBの信号をまとめて処理できる、
という事になるのでは?と思うのです。

上記にリンクを貼ったサムソン社の「ISOCELL」のサイトに、
Nonapixelのイメージ画像が載っており、
それによれば9画素を1つに束ねた1つ1つは、
やはりRGBのいずれかの色しか認識していないような表示となっております。
実際にそういう挙動なのかもしれませんし、
あるいはこれはただのイメージ図で、
実際には1つに束ねられた画素でRGB3色とも処理されているのかもしれません。
そして、もしそうだとしたらある意味これは「ベイヤー配列を打破する1つの手段」
として機能している可能性があります。
シグマ社の「Foveon」のように、
RGBの画素を同軸に並べるという力業に頼らなくても良いのだとすると、
これは将来的にセンサーの常識を覆してくれるのかもしれない、
という予感さえさせてくれるのです。

■「3倍光学ズーム」の真実と(厳密には)ウソ

edge 20の商品説明には、はっきりと「光学式3倍ズーム」
と書いてあります。
(海外のサイトを調べると「3x Optical Zoom」という表現が見られるので、
それを直訳したものと思われます。)

カメラに詳しい人なら、この言葉が意味する事は1つでしょう。
一式のレンズの中で数群が稼働し、
それによって焦点距離が無段階に可変するのが「光学式のズームレンズ」です。

当然、この説明ならこのレンズもそうだろう、と思うはずです。

上の方に、テレカメラのレンズは「7.4mm(78mm相当)」と書きました。
もし説明通り「光学式の3倍ズーム」なら「7.4-22.2mm」などと書かないといけません。
しかし、実際には全く違います。

カメラアプリでズームをする事はできます。
しかし、ズームをしてもExifが記録するレンズの焦点距離は変わりませんし、
ズームした画像は明らかに画質が低下します。「デジタルズーム」です。

では、一体「3倍」とは何なのでしょうか?
このスマホの「広角レンズ」は24mm相当と謳われています。
そして、24mmの3倍は72mm…。

つまり「テレカメラは、ワイドカメラの3倍の焦点距離相当で撮れる」
という意味なわけです。

もちろん、これはカメラ用語としては明らかに間違った使い方で、
もしズームレンズ搭載という言葉通りの意味でこのスマホを買えば、
実際にこのカメラで撮った写真を見てガッカリするはずです。
(正直、自分も「おいおい、違うじゃないか」と思った一人です。
普通に考えれば、こんな薄い筐体の中に、
仮に屈折光学系を導入したとしてもズームレンズを搭載する事などできないだろう、
と想像が付きそうなものでした…。)
20世紀の後半、コンパクトフィルムカメラの中には、
ズームレンズを搭載すると本体価格が高くなるので、
少しでも安くするため、「広角と望遠」といった2種類のレンズを切り替えられる
「2焦点」というカメラが販売されていた事がありますが、
同じ理屈で言えば、このスマホは「3焦点」のカメラである、と説明するのが正しいです。

単純に「約80mm相当の中望遠レンズ」(Telephoto Lens)と書いてあれば、
こんな事を書かずに済んだのです。
仕様を少しでもよく見せたくてZoomという言葉を使ったのかもしれませんが、
本来の意味があった上で使うべきだったのでは、と思います。 

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「ズーム」の表記には疑義を感じるものの、
総じてedge 20とサムソン社のISOCELLには大きな可能性を感じておりましたが、
Xperia 1 IIの前には歯が立たず、あっけなく現役引退と相成りました(笑)
とはいえ、5万円程度で買えるスマホとしては非常によい個体で
(ただ本体サイズがアメリカンで巨大だったので、
片手ではとても操作できないのが実にネックではありました)、
今後SIMフリーのAndroid端末を購入される予定の方にはよい選択肢になるのでは、
と思われました。

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